でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 138号の4ページへ138号の6ページへ »

138号(2000年11月)5ページ

〜実習生からのお便り〜 【 体験実習を終えて 】 東豊田小学校教諭 

 教職十年目の研修の一環として、動物園に体験実習に行かせていただいたのは、夏休みも終わりに近づいた八月の二日間でした。
 お世話になったアジアゾウなどの担当者佐野一成さんは、何も知らず満足に仕事もできない私に、気さくに、しかもきめ細やかに飼育について教えて下さいました。
 二日間は、あっという間に過ぎ、見ることやること全て、驚きと発見でした。ホンシュウジカの糞は、ウサギの糞と似ていることや、臆病なこと、危険を感じると前足を上げて威嚇すること。ブチハイエナは、慌てん坊で、部屋からの通路を本当に脱兎のごとく駆け抜けたこと、象は上下関係がはっきりしていること。怖がって後ろに行くとどんどん追い詰めていくこと等々。餌作りも目を見張ることが沢山ありました。
 そして何よりも、人がいない朝の動物園は、様々な動物達の鳴き声や、水浴びをする音など、静かな中にも確かな命の営みが感じられました。
 しかし、良いことばかりではありませんでした。私がお世話になった時は、シンリンオオカミの雌が、手術をして退院をしました。麻酔から覚めてもまだ餌を食べることができない状態でした。
また、ホンシュウジカの赤ちゃんが、十分なお乳をもらえず、ヨロヨロとしか歩けなかったのです。動物を飼うということは、死にも向かい合わなければいけないことなのだと感じさせられました。幸い、二頭とも元気になってきて安心しました。

 私の担任する4年生は、学校の中で飼育を担当しています。子供達は、ウサギもニワトリも大好きで、よく世話をし抱くことも上手です。気の荒いチャボも大人しく抱かれているのを見ると、愛情を掛けることの大切さが解ります。反面、糞の始末や、水入れの掃除など汚いものは避けようとします。生き物を飼うという事は、自分にとって楽しい事も、いやな事も引き受ける事だと伝えていくことだということ、その支えになるものは、やはり愛情だということを改めて感じました。二日間で私が佐野さんから教えていただいた有形、無形の事をこれからの生活の中で、子供達に返していけたらと思います。

 初日に、佐野さんから「動物園の仕事は掃除に始まり掃除に終わる」と言われました。そして、デッキブラシの扱いは見事で、どんな汚れも落としてしまいます。そして、ちり取りもピカピカでした。プロの技だと思いました。そのプロの道具の名をとって『でっきぶらし』が広報誌のタイトルになったのだと思います。教師になって十数年、私にとっての『でっきぶらし』は何なのか、しっかり持ちたいといました。二日間どうもありがとうございました。

« 138号の4ページへ138号の6ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ