でっきぶらし(News Paper)

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84号(1991年11月)8ページ

あらかると【新獣舎の誤算】

 獣舎を新築する時は細かいところまでアイデアを出し合い、完成後に後悔がないように注意する訳ですが、それでもいざできあがってみると、図面と違って形になると失敗だったと思えるところが出て来ます。
 オランウータン舎の室内展示場の天窓は、他の部屋と違って夏には室内の風を取り入れるように開放でき、むし暑い夜も過ごし易くしてくれます。が、冬になると室内に吹き出て来る温度が、外気で冷たくなった天窓のガラスに当たって冷やされ、他の部屋より三〜四度も室温が低くなります。
 かと言って、この部屋の温度をあげようと思うと、他の部屋の温度があがり過ぎてしまいます。それに広い獣舎のこと、一度でもあげると油の消費量も馬鹿にはなりません。
 そこで、天窓と吹き出し溝の間にアングルを組み、発泡スチロールの板をのせて天井を作りました。そうすると、断熱効果は抜群でした。
 以前だと、キーパー通路より室内展示場に入る度に冷んやりとしたのを感じていたのですが、それがなくなりました。
 住人のジュン(オス)は元々呼吸系が弱く、毎朝あいさつ代わりに聞こえていた咳や鼻汁をすする音。ミルクを飲む時に鼻の奥が詰まってズーズーならしていたのですが、いずれも回数が減ってきたような気がします。
 もちろん、彼が成長し、体力がついてきたこともありますが、いずれにしてもこれでこれからの冬は寒い思いをさせずにすみます。私も温度計とニラメッコのドキドキから開放され、一安心です。
(池ヶ谷正志)

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