でっきぶらし(News Paper)

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220号(2014年10月)3ページ

ゾウとの思いで(Part2)

 当時は園内に独身寮があり私は動物園にいたので、休みも昼・夜にゾウ舎に行き餌をやることで慣れさせることに終始しました。その結果少しずつ慣れてきました。そこで、ゾウに慣れることとコントロールするために調教を行いました。今では動物の虐待になるのでやらない逆立ち・後ろ足で立たせること、また乱杭の上を前進・後退わたりなど、今でも当時利用した放飼場の真ん中にある碁盤上の台の上でいろいろな曲芸をこなしました。ダンボは頭がよくすぐに覚えて対応しました。この頃は動物の曲芸も園内ではいろいろやっていました。チンパンジーの三輪車乗り・竹馬のりの曲芸、オランウータンなどもそうです。ゾウもその一つでそのために毎日午後に時間を決めて調教を行いました。日曜日には午前午後と2回行いました。また、夕方には園内を1周する散歩も行い、途中で伏せさせてお客さんに触ってもらうサービスが好評でした。翌年4月にはインドのマイソール州より旧清水市に贈られたシャンティが日本平動物園に贈られてきました。シャンティは生後1年2か月で体重が250kg、肩までの高さが120cmと小さく、まだミルクを朝晩に1回2ℓをやかんにホースをつけて与えていました。また、園内散歩して芝生のところで休憩していると横になり、30分から1時間は昼寝をしてしまうほどでした。
 また、ゾウ2頭はいま遊具施設(旧こども動物園)のあるところまで行き、幼児教室の子供たちを背中に乗せたり、触ることも行いました。シャンティが来園したその翌年の正月には当時の園長が浅間神社に初詣に参加させるとの話があり、さっそくトラックに乗せる訓練、荷台の後ろに階段をつけて昇り降りの練習をして、年が明けて1月2日、チンパンジー2頭に羽織はかまと着物姿、シャンティはきらびやかに頭にベレー・背中にガウンの飾り付けをしてお参りを済ますと、周囲からは「正月からゾウが見られるなんて、これは縁起がいいゾウ」の掛け声があったそうです。以来正月の参拝と園内で春・秋に行なわれる動物パレードに参加しました。ゾウ・ヒトコブラクダ・ロバにカウボーイ姿のチンパンジーが乗り、その後に動物のぬいぐるみを数体が園内を1周するとお客さんからの声援はすごいものでした。48年にも静岡祭りに参加しました。大御所行列等々の最後に動物園の動物パレードが参加します。シャンティには私たちがインド人の格好をしてついて歩き、ロバの背中にはカウボーイ姿のチンパンジーが乗り、ぬいぐるみの動物がその後に続きました。道路の両側を多くの観衆が埋め尽くした中を動いたり止まったりのスローペースでしたが、無事に終了。しかし、動物園に帰ろうとシャンティをトラックに乗せようとするがどうしても乗せることができなく、仕方なく3人で歩いて帰ることにしました。動物園までは約5kmの道のりを歩くのに一番心配したのは車に驚いて暴走することでしたが、意外に落ち着いて歩いてくれました。街角でゾウに出くわしたら誰でもびっくりするでしょう。たまたまカップルが歩道を歩いている間を「ちょっとごめんなさい」と2人の間に割り込んで通ると、女性は驚き「ギャー」と悲鳴を上げてその場に立ちすくんでしまいました。本当に申し訳ないことをしたと反省しています。そのあとはすんなり歩いてくれて、1時間ほどをかけて無事に帰り着いたのは5時でした。その後、上野動物園でのゾウによる死亡事故が起こってからは危険を伴うこともあり、ゾウを街・園内にも出すことは止めました。


飼育係 佐野 一成

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