でっきぶらし(News Paper)

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212号(2013年06月)4ページ

≪実習だより≫

 私は9月10日から14日の5日間の間、日本平動物園で博物館実習をさせていただきました。企画・展示についての実務、教育普及活動の実務、広報活動の実務、動物病院での資料保存実務と、学芸員の主な仕事を沢山体験させていただき、5日間と短い間でしたが、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
 その中でも私が特に印象に残った出来事がいくつかあります。一つ目は看板作成等の企画・展示についての実務と広報活動の実務についてです。私が実際に体験させていただいた仕事は、新施設の案内看板作成でした。私は今までも日本平動物園に行ったことがあり、そこに展示されている展示物をじっくりと見てきたのですが、ただ動物を観察するだけではわからない情報が沢山あるので、とても面白いと感じていました。
 今回私が担当させていただいたのは動物ではなく新施設の案内についてでしたが、その体験を通して展示物の見やすいレイアウトや読み手に興味を持ってもらえるような簡潔な文章作りがとても大変だと身をもって知ることができました。このように職員の方々が展示物の内容だけではなく、その見やすさにも気を使ってらっしゃるということが実習を通して印象に残ったことのひとつです。
 もう一つは、動物病院での資料保存実務についてです。この実務では主に動物標本作製のための骨洗浄を行いました。具体的には、肉を腐らせるため水に数カ月さらした動物の死体を軽く洗浄し、その後金ブラシ等で骨を磨き、細かく残った肉や脂をそぎ落とす作業でした。この作業はゴム手袋を使って行ったのですが、初めて嗅いだ動物の死臭は想像を超えていて、手袋を取った後も手に臭いが残ってしまいました。
 また、その死臭により集まってくる沢山のハエが飛び回りまとわりついてきたのも大変でした。そして、標本の作り方についても今までなんとなくイメージしていた薬品に漬けて出来上がるのではなく、人間の手で一本一本ブラシを使い肉や脂をそぎ落として作っているのだということも驚きでした。このように標本作製は大変なことの連続でしたが、これまでに博物館や動物園で見てきた動物標本もこのような職員の方々の苦労があって出来ているのだと知ることができ、大変勉強になりました。ただ私の中で少し心残りなのが、今回は時間の都合により標本を最後まで完成させることができなかったことです。標本は沢山の人々の学びに役立つものなので、この貴重な機会に自分の手で一つの標本を完成させてみたかったです。
 5日間、普段は経験できないような貴重な体験をさせていただきました。職員の方々もそれぞれ仕事がありお忙しかったとは思いますが、丁寧に指導していただいたことがとても嬉しかったです。今回の経験を自分の職業選択に生かして、将来の自分の夢に向かって頑張っていきたいと思っています。有難うございました。

静岡大学理学部生物科学科 井上淑尊

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