でっきぶらし(News Paper)

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212号(2013年06月)3ページ

卵といえば・・鳥?いいえ、爬虫類です。

 みなさんは爬虫類の卵を見たことはありますか?爬虫類は多くの種類が卵から産まれます。中には卵胎生と言って、お母さんの体の中で卵が孵化して子どもが出てくるというような種類もいますが、今回は爬虫類の卵についてお話しますね。
 爬虫類は両生類から分かれて進化したと言われている動物です。爬虫類のすごいところは水中から陸上に進出したこと、つまり乾燥に耐える術を獲得した動物だというところです。硬い鱗で覆われた皮膚や、おしっこを尿酸として排出するなど、乾燥に強くなるための色々な特徴がありますが、もちろんその卵も両生類の卵とは全然違ったもので、爬虫類の卵は炭酸カルシウムでできた殻で守られています。
 まずこの殻が面白いポイントなのですが、一般的にワニやカメの卵は硬くて鳥の卵に似ています。スッポンの卵はピンポン玉みたいで、カイマンと名のつくワニは表面がとてもザラザラした卵を産みます。一方ヘビやトカゲの卵は弾力があって柔らかいです。弾力のある卵ってなかなか想像できないかもしれませんが、魚の卵みたいにプチプチ簡単に割れるようなものではなくて、結構しっかりとした・・・うーん、うまく表現できませんが布のような殻をした卵なのです。
 この柔らかい卵は産み落とされてからしばらく経つと、最初と比べて2倍程の大きさにまで膨れます。ワニやカメの産む硬い殻の卵の大きさは時間が経っても変わりません。硬い殻の卵は炭酸カルシウムが密になっていて中の水分があまり失われませんが、柔らかい卵の殻は小さな隙間がたくさんあって、外から水分を補給しながら成長していくのです。柔らかい卵が膨れるのは、周りの土中の水分を取り込むことで大きくなっていたということです。私もそれを知らずに初めてヘビの卵を見たときは、産んだ卵があまりに大きいので「体のどこに入っていたんだ?」とびっくりしました。
 今度は鳥の卵との違いです。爬虫類は産んだ卵は基本的にはほったらかしです。(中にはニシキヘビのように卵を抱く種類もいます。)鳥の卵は親鳥が大切に温めて孵化しますよね、この抱卵中に親鳥は何度も卵をひっくり返して、卵の中のヒナと殻がくっついてしまうのを防いでいるのですが、爬虫類の卵は上下をひっくり返すと実は死んでしまうのです!なので人工孵化させるときには卵の向きが変わらないように注意して、適度な湿り気のある場所に移して孵化を待ちます。卵を産んだ後はほったらかしな理由もちゃんとあったんですね。
 今年の春にカリフォルニアキングスネークというヘビ(以下、カリキン)が卵を産んだのですが、その産卵までの行動は母の愛に溢れたものでした。交尾を確認してから、いつ産むのかなぁと楽しみに待っていたところ、ある日の朝、カリキンの部屋の土がなぜかしっとりと湿っているのです。土に水を撒いた覚えもないし、水に入ったヘビが濡れた体で這いずり回ってもこれほど大部分が湿っているはずがないので不思議に思っていました。その数日後にメスのカリキンが湿った土を必死に掘っている姿を見かけました。頭で掘って、体をくねらせて・・・。気付けば普段は乾いた硬い土が数日の間にしっとりとした、卵を産むのに最適な場所に変わっていたのです。その時にやっと気付けました、土が湿っていたのは卵がちゃんと育つようにと、母ヘビが何度も水に入って地面を濡らして産卵場所を作っていたみたいです。その後産卵は無事行われて、卵はバックヤードで順調に育っています。
 見た目やイメージで嫌われがちなヘビですが、こういった素敵な一面も持ち合わせていると思うと、ちょっと印象が変わりませんか?爬虫類は見た目も行動も面白い魅力たっぷりの動物です。是非は虫類館に足を運んで彼らの様子を観察してみて下さい、きっとお気に入りのは虫類が見つかると思いますよ!

飼育担当 久保 暁

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