飼育日誌

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11月19日は「世界アリクイの日」——日本のオオアリクイ飼育園館が初めて合同で保全啓発を実施します

11月19日は「世界アリクイの日」——日本のオオアリクイ飼育園館が初めて合同で保全啓発を実施します

毎年11月19日は「世界アリクイの日(World Anteater Day)」です。

世界アリクイの日は、アリクイとその生息地が直面している脅威、そしてアリクイを守ることの大切さを世界に伝えるための日です。

 この日は、アリクイの保全活動を行うブラジルのNGO「Instituto Tamanduá」と「Instituto Jurumi」によって2014年に設立され、国際自然保護連合(IUCN)のアリクイ専門家チームにも公式に承認されています。

もともと「世界アリクイの日」は11月29日でしたが、同日が2018年に設立された「ジャガーの日」と重なることから、アリクイへの注目が薄れないために、2023年より日付が11月19日に変更されています。

アリクイは有毛目アリクイ科に分類される哺乳類で、野生下のアリクイは生息地の減少や交通事故など、さまざまな脅威に直面しています。特にオオアリクイ(Myrmecophaga tridactyla)は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に分類されており、国際的な保全への取り組みが求められています(IUCN, 2025)。
オオアリクイ(Myrmecophaga tridactyla)


オオアリクイは日本動物園水族館協会(JAZA)で保全の優先度が高い動物種


オオアリクイは日本動物園水族館協会(JAZA)のコレクションプラン種(※)の「管理種(JSMP)」に位置付けられており、国内での個体群管理・繁殖計画のもと、長期的な飼育・保全が進められています。JAZAでは毎年「オオアリクイ計画推進会議」を開催し、各園館が連携して繁殖・移動・情報共有を行い、遺伝的多様性の維持と持続的な個体群の形成に努めています。



※保全上の必要性、教育的価値、学術的価値、展示効果その他の指標に基づき、継続的に飼育管理することが必要とされる種

日本は7園で18頭を飼育、世界でも有数の飼育国

現在、日本では7つのJAZA加盟園館で計18頭のオオアリクイが飼育されています(2025年10月現在)。一見少なく感じられるかもしれませんが、この飼育頭数は世界で第6位に位置しており、日本は世界有数の飼育国の一つです(Schappert, 2016)。

そのため、日本におけるオオアリクイの継続的な繁殖や調査データの共有は、国際的な種の保全においても重要な役割を担っています。

7園合同による保全啓発活動を初実施

2025年の今年、オオアリクイを飼育する全国7園が合同で、初の保全啓発活動を実施します。世界アリクイ日にあたる11月19日を中心に、ブラジルでオオアリクイの保全活動を行う野生動物保全研究(ICAS)の協力のもと、各園で共通デザインの展示パネル掲示やSNSでの情報発信、ガイドイベントなどが展開されます。 詳細は、各園の公式ウェブサイトやSNSをご覧ください。

(公社)日本動物園水族館協会に加盟するオオアリクイ飼育園館


江戸川区自然動物園


よこはま動物園ズーラシア


名古屋市東山動物園


神戸市立王子動物園


神戸どうぶつ王国



沖縄こどもの国


静岡市立日本平動物園

この機会に、ぜひ園を訪れ、実際のオオアリクイの姿を通してアリクイを取り巻く環境や保全の重要性に触れていただければ幸いです。

参考文献:

IUCN, 2025. The IUCN Red List of Threatened Species Version 2025-2. International Union for the Conservation of Nature and Natural Resources. Available from https://www.iucnredlist.org/fr/species/14224/210444314 (accessed on 22 Oct 2025).

 Schappert, I. 2016. International Studbook for the Giant anteater: Myrmecophaga tridactyla (Linne, 1758) 16th. Edition 2012-2016. Zoo Dortmund.

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