でっきぶらし(News Paper)

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142号(2001年07月)3ページ

オグロワラビー・栄枯盛衰

オグロワラビーは1975年に飼育を始め、最盛期には11頭を数えるまでに至っています。繁殖賞(日本ではじめて繁殖し、6ヶ月以上成育した時に与えられる賞)も頂いているほどです。
 また、出産時に多くの謎がある有袋類ですが、その時のシーンの撮影にも成功しています。それは貴重な記録として、ワラビー舎の一角に写真パネルにして展示されています。来園者の興味もよくひいています。
 そんなワラビーも1頭また1頭と数を減らし、先日オス1頭が死亡し、残るは年老いたメス2頭になってしまいました。こんなことになった責任の一端は私にあると思っています。
 数が減って、オス2頭メス3頭になった時、発情期が来る度に弱いオスは、強い方のオスに、一方的にやられるばかりでした。見るも哀れで、背中の皮をはがされて血だらけになり、やむなく別居させねばならない程でした。
 そんな折に他園からオスが欲しいとの申し出があり、私はその強いオスを放出することにしました。群が穏やかに平和になる方を選んだのです。
 確かに発情期のしつこい追廻は無くなり、静かな生活にはなりました。が、それは繁殖がばったりと止まる始まりでもありました。
 本来、オスたちはメスの所有を巡って闘争し、勝ったオスがメスと交尾する権利を得ます。強いオスの子を産むことによって、種はより強くなっていくようになっています。
 平常は静かな生活をしていても、発情期には強いオスだとアピールできる個体でないと、繁殖はやはり難しいのかも知れません。反省しています。
 今、若い個体を欲しいとの希望を出しています。実現すれば、近い将来、袋から子が顔をのぞかせる愛らしい姿が見られるかもしれません。

(池ヶ谷 正志)

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