でっきぶらし(News Paper)

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142号(2001年07月)2ページ

夕方の静かなる戦い

2ヶ月前にシンリンオオカミが猛獣舎ゾーンからクマ舎へ引っ越ししてきたのですが、オスの「バロン」は新しい環境になかなか慣れてくれず、ただいま少々手こずっています。では、何に手こずっているかと言いますと、夕方、放飼場から寝室へ入舎させる時が一番手こずるのです。出入口の扉を降ろして収容するのですが、その時「ガタガタ、ドスン」と言う音がするのです(なにせ30年前の施設なので・・・・)。この音がバロンにとってはすごく怖いようで、寝室になかなか入って来ようとしません。
 さあ、夕方のこの時間からバロンとの持久戦が始まります!

 当初は、入舎の際「バローン、おいでー」と、声をかけて入って来るのを待っていたのですが、「部屋の前にいる人=(イコール)出入口の扉を閉める人」と頭の中にインプットされてしまったようで、警戒して絶対に入って来ようとしません。そこで、バロンに分からない様に気配を消して、入ってくるのをジッと待ちます。部屋の中に餌が有ることを知っているバロンは中に入りたいのですが、出入口のシュートの扉が気になってなかなか入ろうとしません。まず、出入口の扉の辺りを警戒しながら近づいて、クンクン匂いを嗅いだり、キョロキョロ覗き込んだりして、扉が降りてこないことを確認します。

 それから、体を緊張させ、頭→前足→胴体→後足→尻尾の順で前に少し進んだり、すぐに後ろに引き下がったりしながら恐る恐る入 ってきます(まさに一歩進んで 二歩下がると言った感じです)。
 ここで、徐々にですが、そのまま入ってくれれば良いのですが、どこかで物音がすると、すぐにピュー出ていってしまいます。そんなことを何度も繰り返しているうちに、時間ばかりが経ってしまい、とてもじれったくなります。でも、ここで焦るのは禁物です。焦ると気配を察して入ってこなくなります。気持ちを落ち着かせ、息を潜め、ようやく入ってきたところを、こちらの気配を悟られないようにし、一気にシュートの扉を降ろし収容します。と、まあ、こんな持久戦の日々が、かれこれ2ヶ月以上も続いています。そして、バロンの警戒心はいまだ解けず、今日もまたバロンとの持久戦が始まるのでした・・・。

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