でっきぶらし(News Paper)

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140号(2001年03月)7ページ

友の会コーナー 第45回プリマーテス研究会 に参加して

  私はガイドボランティアと友の会ボランティアに所属していて、4年が経ちました。そろそろガイドにも慣れ、人並みに知識も増え、お客さんやボランティア仲間に自分の持っている情報を提供するのが楽しくなってきました。今まではひたすら情報を得るので手一杯だった私ですが、最近ガイドのあり方について考えるようになりました。
 私が知っている面白いことをお客さんに教えたい、知ってほしい、そんな情熱だけのガイドでは何だか押し付けがましいガイドになってしまうのではないか・・・。そんな気がしていても、ではどうすればいいのか具体的には思い浮かばない。  そんな時、今年2月に日本モンキーセンターにおいて第45回プリマーテス研究会が開催され、今回のテーマは「わからないこと?さがそ!─22世紀に向かう動物園・博物館で─」でした。その中に何かヒントがあるように思え、参加してみました。

 まず、子供たちは(子供に限らないとは思いますが)どのようにして興味を示してくれるのか。それを具体的に示してくださったのが小学校教諭小田泰史先生の「?(はてな)のさきに見えるもの」です。先生は学校の廊下にあるガラスケースで、子供たちの反応を観察していきました。『─乾燥したヤシの実を入れました。子供たちは、見て通ります。ガラスをはずしてみました。子供たちは、触っていくようになりました。重さを比べるために、ペットボトルを置きました。子供たちは、持ち上げていくようになりました。─』。その時先生は言葉での説明を一切つけませんでした。子供たち自ら疑問を見出す。小田先生は「はてなを楽しむ」とも言っています。そこにすべて答えを用意してしまうのではなく、最初は「何だ?これは。」から始まって目を向けてもらう、それが重要なのだそうです。

 そういえば、ガイドボランティア小型サル班の頭骨のガイドは、子供たちがよく集まってきます。遠くにいる子供は「何だ?あれ。」といった目で近づいてきます。そして「うわっ!骨だ!」とびっくりしながらも「本物?」と触ってみます。そこまで来れば、何の動物か、歯の違いなど、話を展開していけます。そこでもあまり文字の表示はありません。ただ、そこで1つ残念なことは、子供たちが答えを見出すまでのんびり待てない親御さんが多いことです。こちらの質問に答えられないと、すぐにわかりやすいヒントを出してせかしてしまいます。その時だけは子供のペースに合わせてほしいと願うばかりです。

 そんな「見て・触って」の次にさらに学習効果を高めるため、参加体験型の特別展を開催し、発表された方がいました。琵琶湖博物館の「漁師修行の旅」です。ネーミングも面白いですが、中身がとても濃くてびっくりしました。体験するためのキットとガイドブックが配られ、1つ1つクリアーしていかなければ先へ進めないようになっています。「こすりだし」といって魚拓に似た体験ができたり、「やまて」は湖で自分の居場所を測ることが出来たりと、3つの展示室をフルに使って様々な体験が出来るように展示に工夫がされていました。1つ1つの展示を体を使って動かしたり設問をクリアーすれば、修了証などがもらえることはもちろん、地元の漁業のことやそれらを通して文化や環境についてなど、とても高い学習効果が得られたということです。そして、ここでも答えは簡単に得られないようにしてありました。そのため、小学校低学年には少し難しかったようです。

 これらの「見て・触って・体験する」といったことを15分程度のスポットガイドにうまく集約した形を発表し、その場で実践して下さったのが、日本モンキーセンターの郡司晴元さんでした。最初は台の上にぽつんと箱が置いてあります。その中身をお客さんに当ててもらうというものです。1人のお客さん(子供)に出てきてもらい穴の中に手を入れて、触った感じから特窒?次々言ってもらいます。中身はチンパンジーの下あごの骨でした。その時の質問者(ガイドする側)と参加している子供とのやりとりも面白いのですが、自分が久しぶりにお客の立場で聞いてみた時、お客代表が参加する場合と参加しない場合とでは、参加するほうがとても見ている側もどきどきしながら見入ってしまうことがわかりました。これは私が大道芸を見ているときもそうだったのですが、お客さん代表が体験してくれることによって、自分もその場にいるような楽しさが伝わってくるのではないでしょうか。たった一つの頭骨でここまで盛り上がるスポットガイドを見せていただいたことは、私にとってとてもいい経験になりました。私もいずれ機会があったらこのような手法でガイドをしてみたいなあと思います。

(佐渡友 章子)

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