でっきぶらし(News Paper)

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140号(2001年03月)4ページ

〜あらかると〜 

昨年十一月三日にオランウータンのメス、ベリーを亡くして、オスのジュンと共に元気をなくしてしまいました。しかし、東京都多摩動物公園のご厚意により、四月二十三日に待望のメスを迎え入れることが出来ました。
 名前はジュリー、この名前はくしくもジュンと亡きベリーとの間にできた子と同名(二才の時に横浜の動物園へむこ入り)で、またこの名前を呼んで世話をすることになるなんてことは思ってもいませんでした。
 ジュリーは午後に到着、収容作業は案外スムーズに運びました。が、後がいけません。初めての場所が不安なのでしょう。床へ降りようとせず、天井の格子につかまったそのまま動かなくなってしまったのです。
 翌日になっても、まだ動きません。よく見ると腕も脚もかなり疲れているようでぷるぷると震え、さすがに限界にきているようでした

 三日目、やっと床に降り餌を半分ほど採食しました。部屋は糞尿と残餌で汚れ、臭いも漂い始めていたので別の部屋へ移動させようとしましたが、まだ気持ちに余裕はないようで動こうとはしませんでした。でも、餌を少しでも食べてくれたので、少しは楽になりました。
 糞や残餌の臭いが類人猿舎全体に漂い始めた六日目の昼にやっと移動、清掃することが出来ました。ところが移った部屋もまた初めての部屋、ここでも天井につかまりそのまま降りようとしなくなりました。
 しかしながら、こちらは一日で慣れ、床に寝るようになりました。餌もほぼ一日の必要量を食べるようになり、なんとか飼育のペースができてきそうでした。
 人でも高齢で見知らぬ土地へ移り住むと、そこの環境に慣れるまでには時間がかかるものです。何もわからぬまま連れてこられたオランウータンのジュリーにとっては,尚更でしょう。

 ジュリーは三十五才、人の年で換算すれば七十才近い高齢です。当園でおそらく猿生の終わりを迎えるでしょう。あせらず暖かく彼女を見守り、ベリーを亡くしてから元気をなくしているジュンと早く一緒に出来たら、と思います。
 同居に成功したその時は、ジュンと共に喜びを分かち合いましょう。その日が一日も早くやってくるのを願ってやみません。       

(池ヶ谷 正志)

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