でっきぶらし(News Paper)

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217号(2014年04月)3ページ

お見合い大作戦!!

動物園の動物も仲良し夫婦になる前にお見合いをしていることを皆さん知っていますか?私は動物病院で飼育業務をしています。そこで今回は、動物病院内でお見合いをしたシロガオサキとアビシニアコロブスという2組の新婚サル夫婦のなれそめを話したいと思います。当園のシロガオサキ、アビシニアコロブスは、最近他の園から素敵なお嫁さんを迎えました。
 まず、「どうして、お見合いを展示場所ではなく動物病院で行うの?」と思った人もいるでしょう。動物園ではお嫁さん達も含め、新しく来園した動物を、大きさにもよりますが、一度動物病院で病気を持っていないかを確認する検査、つまり検疫をします。これは、日本平の動物を病気から守る大切な検査です。検疫を終了したからと言って、すぐにお嫁さんたちをオスのいる展示場に連れては行きません。お嫁さんたちは、全く知らない場所で戸惑っている間にまた移動して、いきなりオスと会わされては混乱してお見合いどころではないからです。オスにとっても同じことが言えます。その上、展示場では近くに他の動物やお客さんもいるのでより環境に戸惑い、混乱するかもしれません。その混乱は興奮、喧嘩、事故、怪我に繋がる可能性もあるのです。
 このような理由から、お嫁さんを迎えることが出来たシロガオサキとアビシニアコロブスのオスは、展示場から一時動物病院に移動して、お見合いをすることになりました。
 行動、エサの食べる量や糞の状態などを観察して、検疫の終わったお嫁さんたちがある程度動物病院の中の入院室での生活に慣れてきたな、と感じることが出来れば、オスの出番です。オスたちを、お互いのお嫁さんの隣で飼育します。オスにも動物病院内に慣れてもらい、お互いに隣の様子をうかがう余裕が出てくればお見合いスタートです。オスとメスの間にある網を外します。様子を観察しながら5分、15分、30分、1時間、3時間、半日、夜以外、一日中と網を外して同居させる時間を日ごとに増やしていきます。その間にもエサの与え方を最初は別々の小屋で、網を外して別々の皿で、同じ皿でと変えていきエサをどちらか一方が独り占めしないかも確認します。そのように長い時間をかけて、オスがお互いのお嫁さんと安全に暮らしていけるかを判断出来れば、ついに展示場デビューです。
 このようにシロガオサキとアビシニアコロブスのお見合いをしました。シロガオサキカップルのオスは少し高齢でありながら、初日のお見合い開始2~3分で交尾をして、見守る獣医、飼育員の度肝を抜きました。その後オス、メスともに仲の良い様子が観察できましたが、徐々にメスがオスから逃げ回り、逃げるメスにオスがひとりで怒ることが続きます。攻撃的な行動が見られないため広い展示場に移しましたが、オスが自分の縄張りである為か、以前より強気な行動に出るようになったので、現在では展示場で場所を変えた2回目のお見合いを行っています。早く皆さんに仲の良い夫婦になった姿をお見せしたいです。
 一方、アビシニアコロブスは初めメスがオスに怯えるものの、徐々に慣れ、隣に座る時間が長くなり、オスがメスの尾をチョンチョン引っ張るなどの行動も見られるようになりました。こちらは展示場に移動して、よりラブラブになった姿を現在観察出来ています。
 今までオスは展示場で一人暮らしをしていましたが、お嫁さんを迎えて以前よりも生き生きした違った姿をご覧になれると思います。ぜひ日本平動物園の2組の新婚さんを見に来てくださいね!

動物病院係 志村 楓

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