でっきぶらし(News Paper)

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214号(2013年10月)3ページ

フライングメガドームにクモザル?

 でっきぶらしにコメントを寄せるのは、4年ぶり2回目となる。どんな事を書こうかと考えた時、私が飼育担当している動物で、真っ先に思い浮かんだのが、ジェフロイクモザル(英名:Geoffroy’sSpiderMonkey)であった。
 当園内で目立つ動物でも無く、特に話題として取り上げられるわけでもない動物だが、なかなかおもしろい動物である。
 飼育されている場所はフライングメガドーム内の通称「サル島」と呼ばれている浮島である。なぜ?フライングメガドームの鳥たちと一緒に飼育されているのか?当初、私も不思議だった。先輩飼育員たちに尋ねてみたところ、メガドームが出来る前、池を造った際に、当時の飼育員たちで浮島を手作りして、テナガザルを飼育したのが始まりだということだ。メガドームが完成する前は、今のようなネットも無く、池の淵のベンチに腰掛け動物を見ることが出来た。少し前、メガドーム内に入って来られたお客様たちは、飛び交っている鳥たちを観てはオッーと歓声を上げていかれるが、クモザルを見つけても、あれ?サルがいる・・・などと言っていく程度であった。
 しかし、オランウータン館が完成し、入口の所にクモザルの島がネット越しに見えるようになり、私がエサをあげている時、足を止めて下さるお客様たちに、エサやりをしながら、3頭のクモザル、母娘一家の話をするようになった。
 なんといっても、エサの採食の仕方が、面白い。2足歩行しながらすらりと長い両手は勿論、足、シッポを器用に使いながらエサを掴み、身体全部を使って一生懸命エサを採食する。母親ザルは子ザルたちよりも身体も大きく、力も経験も優れているため、1人で全部食べてしまうのではないかと思うほどの勢いで島の中を走り回る。 
 さて、2頭の子ザルたちはどうかというと、それぞれ採食する姿が違う。上の娘は、母親ザルを常に意識しながら、母親ザルから逃げるようにしてエサを採食する。しょろしょろしていたら、母親ザルに横取りされてしまうからだ。これは毎日のことながら気の毒に感じる。「いつまでも持ってないでどんどん食べろよ!」と声を掛けたくなる。一方、下の娘は要領よく採食する。母親が自分の所にほとんど来ないものだから、自由に採食しまくる。そんな光景を見ていると、サルの社会でも、人間の社会と同じで、要領の良い奴・悪い奴がいるんだよなぁといつも思う次第である。
 クモザル母娘の島にエサを置いて眺めていると、こんな気持ちになる。私はゾウの飼育担当もしているが、ゾウに接している時は、常に気を張り詰め、動きのひとつひとつに気を遣い、まだまだ先輩飼育員から学ぶことが多すぎて気が抜けない。クモザルの飼育で気を遣わないわけではないが、一日の飼育の中で最もホッと息をつける一時であるのは間違いない。
 そんなクモザル一家をお客様にこれからも見て頂ける様に、自分も見守っていけたらと思う。来園された際には、是非、クモザルを観に、足をお運びください。

飼育担当 児玉 賢之

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