でっきぶらし(News Paper)

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あらかると[ジュリー食べてちょうだい](その2)

前号でオランウータン・ジュリーの離乳の苦労を書きましたが、その原稿を編集者に渡したその日の午後、皮肉なことに自ら食べ始めました。
いつものようにバナナをひと口ぐらいにちぎって口元へ持ってゆくと、いつもはヒーヒー泣いて口を堅く閉じてしまうのに、口を開けたのでこれ幸いとバナナを放り込みました。
なめるような食べ方は変わりません。が、今までなめ切れないで残していたツメの先ぐらいの固まりを、ゴックンと音が聞こえたと感じるように飲み込んだのです。前日までは数十分を要していたのに、この間数分です。
念の為にもうひと口与えましたが、やはり同じように食べました。これは間違いありません。長かった!!
隣のチンパンジーは140日で、それに比べジュリーは310日と自ら食べ始めるようになるのに倍以上の日数を要しました。が、これで今までの重苦しさから開放されます。晴れ晴れとした気分です。
それにしても、原稿を出した当日に食べ始めるとは。まるで担当である私の離乳作業の工夫の足りなさを、読者の方にさらけてしまったのを、償っているようですらあります。
まあ、その後は順調に離乳は進み、今では一日にリンゴ、バナナ、ミカンを各一ヶずつ食べています。チンパンジーにかなり遅れをとっていたのに、時にはそれをしのぐ食欲すら示します。体重も生誕時の1800から一才を迎えた今は6600gに増えています。
桜の花が咲く四月頃には、チンパンジーのジーコと連れ添っているのを子供動物園で見ることができると思います。御期待下さい。(池ヶ谷正志)
前号、チンパンジーの名前がエディになっておりましたが、ジーコの間違いです。お詫びして訂正いたします。

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