でっきぶらし(News Paper)

« 246号の4ページへ246号の6ページへ »

マレーバク フタバの成長記

 今回は、フタバの成長について紹介したいと思います。フタバは今年の1月29日で5歳になるオスのマレーバクで、南紀白浜にあるアドベンチャーワールドで生まれました。フタバのお父さんのゲンは当園生まれの個体で、その息子のフタバは当園所有なので繁殖のために来園しました。
 マレーバクは温厚な動物で、ブラッシングといってデッキブラシやタオルなどで体をこすると自ら体を横に倒して寝てくれるため、麻酔をかけることなく足の裏や体のケアができる動物です。それぞれの性格もあるようですが、他の動物園でもほとんどのマレーバクを同じように体調管理しています。日本平動物園では以前から飼育担当者が毎日ブラッシングをしていて、ケガなど異常が見られたときは獣医さんに来てもらいます。
 フタバが来園したのはまだ1歳になる前の生後約10か月の時で、とても臆病で音に敏感に反応してしまったため、なかなか部屋に一緒に入ることもできませんでした。温厚といっても体重は300kgほどあるので、一緒に部屋にいる状態で走り回られたり、噛まれたりしてしまうと大けがになってしまうので、慎重に人や音に慣らしていきました。知らない人や音が特に苦手で、前任者が2年ほどでブラッシングすることができるようになってきた状態で担当が私に変わり、フタバがまったく知らない私に再び慣れてもらうところから始めました。
 2歳程度で性成熟するマレーバクなので、私が担当した時には落ち着きはじめていたのですが、遠くの音や飼育員の必需品である無線機の音にもびっくりして起き上がっていました。私は担当になってから、積極的に色々な事に慣らそうと思いました。一人でブラッシングに入ると、ケガをしたときなど対処できないので、獣医さんと一緒か、他の職員と必ず二人以上で入るようにしました。半年くらいは横になってくれたり拒否したりと、フタバの気分により安定しませんでしたが、1年ほどで、かなり安定してブラッシングをさせてくれるようになり、色々なところを触ってもじっとしてくれるようになってきて、大人になったなぁ~と思うようになりました。
 音がしても起き上がることもなくなり、無線機の音も平気になってきたので、次はお尻の穴や血管を触れるようになったら、もっと健康管理ができるんじゃないかと思い、毎日触ることを続けました。すると、お尻の穴に指を入れても、血管をシャープペンシルで突いても、大人しくしているようになり、体温測定や採血を行うことができました。最近は、毎日のように体温測定ができるようになり、1年に1~2回の採血も行うことができています。マレーバクは寒さに弱く、湿疹ができたりすることもありますが、担当者には立ったままでも嫌がることなくケアさせてくれるようになりました。
 2年間で大人になったフタバですが、今後お嫁さんがきても紳士的な対応をしてほしいと願う担当者でした。
(井上 志保)

« 246号の4ページへ246号の6ページへ »