でっきぶらし(News Paper)

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サイチョウの営巣

 熱帯鳥類館は主に熱帯地方に生息する鳥類が飼育されている展示施設です。
 その飼育鳥類のなかのひとつにサイチョウのつがいがいます。サイチョウはタイ南部からマレーシア、インドネシアにかけて生息する大きな鳥で、大きなくちばしの上に付いているこれまた大きなとさかのような突起が特徴です。 これがサイの角に似ているためサイチョウという名前がつきました。
 サイチョウの仲間は東南アジアからアフリカにかけて分布し、いろいろな種類がいます。
 熱帯鳥類館には他にオニオオハシというやはりおおきなくちばしを持った鳥がいます。こちらは南アメリカ原産でその姿はサイチョウに似ていますが、オニオオハシはサイチョウの仲間とは分類上まったく違う鳥の仲間です。
 さて、サイチョウはとてもおもしろい営巣の習性を持っています。野生のサイチョウは大きな木の洞に巣をつくり、子育てのときメスが巣に閉じこもりますが、そのとき巣の入り口はくちばしが出るくらいのすきまを残して塗り固めてしまうのです。そしてオスが巣のなかのメスと生れたひなのためにエサを運ぶのです。
 日本平動物園のサイチョウのつがいは来園して20年以上になり、これまで2回繁殖していますが、ここ数年はメスが巣穴にこもるような様子はときどき見られたものの、繁殖していませんでした。ことしの3月に入ってから営巣活動がみられるようになりました。サイチョウの展示場内には営巣用の泥をコンテナにいれて置いてあります。巣は木の巣箱を利用していますが、その巣箱の巣穴の周りに泥を塗ってあるのが観察できます。営巣中オスは気が立っているので、展示室に近づくと見にきた人を威嚇して、大きなくちばしでガラスをゴツンゴツンと突っつきます。そこであまり刺激しないように、ガラスの前にバーを置いて少し離れたところから観察してもらうようにしました。はたして今回サイチョウの繁殖はうまくいくでしょうか。みなさん期待していてください。
 営巣といえばフンボルトペンギンたちも1月から3月にかけて数か所の巣穴で営巣を始めました。ヨシズの葦の茎を短く切った物を巣材にして卵を温めます。3月半ばにひとつの巣穴でひながかえったのが確認されました。昨年もいくつかの巣でひながかえったのですが、無事にそだったのは一羽でした。今年は動物園の再整備のため工事中の場所が多く、ペンギンの繁殖への影響が心配ですが、たくさんペンギンのひなが繁殖することを期待したいものです。
 フンボルトペンギンというと南アメリカの太平洋側で、フンボルト海流という寒流が流れる沿岸に生息するので有名ですね。やはりフンボルト海流の流れる海にすむ海鳥がもうすぐ皆さんの前にお披露目される予定です。
 その情報を少しだけお話しましょう。上野動物園からインカアジサシという鳥が2月14日に日本平動物園にやって来て、いま動物病院の二階で出番をまっています。
 新しく建設された「フライングメガドーム」には、いままで日本平動物園で飼育されているいろいろな水鳥が放される予定ですが、このインカアジサシもここでデビューします。さてどんな姿をした鳥でしょうか。たのしみに待っていてください。

動物病院 菅野 展美

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