でっきぶらし(News Paper)

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日本平動物園ジビエ料理

最近よくクマに襲われた、畑が荒らされた、見かけたなどのニュースや記事が連日、目に飛び込んできます。特に東北地方、北陸地方、北海道などの被害が目立ちますが、最近では静岡でも目撃情報が報道されています。

エサとなる木の実の凶作によるクマの生息域の拡大、または個体数の増加、逆に狩猟者(ハンター)の減少で捕獲や駆除が追つかない状況で人里にエサを求めて下りてきてしまいます。クマとしては生きるために当然の行動です。ですが我々人間がクマに出くわしたら生きた心地はしません!童謡の様な白い貝殻のイヤリングを届けてくれる優しい、ラララ♪ ラララララ~♪のくまさんなら別なのですが、そんな優しくもあり愛されているクマは某テーマパークでしか見たことがありません。

クマ以外にも鳥獣被害は深刻な問題です。全国農作物被害額150億円台(令和4年度)、その約7割をシカ、イノシシ、サルなどが占めているそうです。生活環境の被害ではハクビシン、アライグマなどの家屋への侵入、カラスなどによる鳥害(糞や騒音)があげられます。もちろん駆除は何万頭と行われてはいますが、クマ同様追いつかない状況です。また、駆除された内93%が廃棄、7%がジビエ利用と、ほとんどが廃棄されているそうです。理由として新鮮な内に食肉処理施設まで運搬するのが難しいことや、銃器・箱罠での捕獲は時間が経つと肉の損傷、鮮度など衛生面の問題から食用に適さないと判断される事があるそうです。

前置きが長くなりましたがここからが本題です。そのような行き場のない鹿の骨付き肉と皮付き肉がこの日本平動物園に届きます。私の担当動物はジャガー、ピューマ、トラ、ライオンです。鹿肉はいつも日曜日に全頭に与えていますが、皆喜んで食べてくれます。すぐにガッついて食べるライオンのギル。ぶん投げてバシャバシャ水に付けて、私に咥えた肉を見せつけて食べるジャガーの小梅。すぐには食べずにゆっくり夜から朝にかけて食べるピューマのアルタイル。骨付き肉には見向きもせず、削いであげれば食べてくれるお坊ちゃま育ちのトラのフジ。それぞれにいろいろな食べ方のスタイルがあります。

動物園では骨付きの肉、皮付きの肉を与える食事を「屠体給餌(とたいきゅうじ)」と呼びます。日頃与えている餌は骨がなく食べやすい大きさの肉ですが、彼らにしてみたら物足りないですよね。私もたまに晩酌しますが、湯豆腐よりは歯ごたえのあるイカやモツの方が楽しめます。ネコ科の動物達の狩りは犬歯(牙)で獲物を仕留め、奥歯で皮を剥ぎ、肉を切り裂き、前歯で肉を食べます。またネコ科の動物たちの舌の表面は硬いトゲのような突起がびっしり生えています。そのザラザラした舌をヤスリの様に使って、骨にわずかに残った肉をきれいに舐めとって食べます。屠体給餌により、狩りで獲物を仕留めるという事以外は全て可能となり、餌を口に入れるまでに多くの行動が引き起こされ採食時間が長くなります。この一番の目的は、彼らに飽きさせず楽しく食べてもらうことです。屠体給餌をするのは基本日曜日です。月曜日が祝日なら月曜日に与えますので、皆様も彼らの喜んで食べている様子をぜひ見に来て下さい。

(市川)

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