でっきぶらし(News Paper)

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47号(1985年10月)2ページ

良母愚母 第8回 

 からっと晴れている時は夏の名残りを、しとしとと降る雨は秋の深まりを感じさせ、それに朝夕の気温の変化も激しく、季節の変わり目はややもすれば体調を狂わせ勝ちです。周囲の仲間を見渡しても、何人か鼻をグシュン、グシュンさせている人がいます。
 
 動物にとっても、この時期は大変です。特に幼獣を担当している者は、より気を遣わせられます。風邪をひかないか、熱を出さないか、下痢をしないか、等々の為にです。
 私自身、2才半ばと3才半ばのオランウータンを担当している身。グシュンとされてはドキッ、下痢をされてはドキッ。気が休まることがありません。ふだん全くの不信心でありながら、何かに祈りたくなることすらあります。
 日、一日と寒さが増している中、早く大きくなあれと願い、寒さにも暑さにも負けない丈夫な体になる日が待ち遠しい限りです。これは母親に近い心境なのでしょうが、動物の良母が折りなす慈しみには、とてもとても勝るものではありません。

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