でっきぶらし(News Paper)

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40号(1984年08月)6ページ

ペンギンがとぶ その6 オウサマペンギンの産卵

(松下憲行)
 ペンギンを再び担当して、もう1年以上。月日の駆け巡る早さに、ただ驚くばかりだが、そのわずか1年余りの間にも、何だかんだといろんなことを体験させてくれた。小さなペンギンの池ながら、その波はちっとも穏やかではなかったのだ。まずはオウサマペンギンが、連れ合いもいないのに産卵する。そんな素っ頓狂な出来事から始まった。
 私が担当するかなり以前に、オスは死んでしまっていた。アスペルギルス症にかかったり、枯葉を食べたりしてである。2羽いるメスは、ともに連れ合いを失っていたのだから、産卵などとても想像できることではなかった。それが朝来てみると、卵のう(足の間の上にある卵を抱くふくろ)に卵を入れてしっかりと抱いているのだ。
 彼らは、抱卵し始めると餌を食べない。孵化するまで、40日以上はかかるだろうか。その間オス、メスで交替でひたすら抱き続ける。かつて、有精で孵化直前までこぎつけたこともあったが、今抱いているのは100%以上の確率で無精卵。抱かせても無意味な卵である。懸命に抱いている姿を見るといささか哀れであったが、餌を食べなくなるので夕方には取り上げた。
 これが、昨年5月30日のこと。その2週間後の6月13日に今度はもう1羽のオウサマペンギンが、更に11日後、取り上げられた腹いせでもないだろうが、先に卵を産んだペンギンが再び産卵した。ペアでいるのだったらわくわくする出来事であるが、無精卵と分かっていれば喜びようもない。見本の卵が増えただけであった。

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