でっきぶらし(News Paper)

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54号(1986年11月)3ページ

レンズから見た動物達【大失敗】

 十一月下旬のことです。キリンの出産観察などで、現像が遅れているものがあることに気付き、あせっていたのがそもそもの始まりです。
 朝の内に現像液と定着液を作っておけば、昼休み中に終わらせてしまえるであろうと、暗室の中をごそごそ探したのですが、なかなか見つかりません。やっとのことで見つけ出し、大急ぎでお湯の中に粉末を入れて、それは取り合えず済ませてきました。
 それからいつもの仕事を済ませ、昼ごはんを食べてから再び暗室に行き、まず写し終えたフィルムを暗い中で手探り。フィルムホルダーから外し、現像用タンクの中に巻き込みました。
 フィルムは三本あり、一本は十一月十四日に出産したキリンの分娩シーンで、他の二本はマレーバクの子供のうり模様が消えてゆく様子を記録したものでした。
 まず一本を二十度に調節した現像液のタンク内に入れ、ストップウォッチを回しました。約八分で終わり、次に定着液を注いで六分位で定着。その後は水洗いをして出来あがりを待つだけです。
 二本目も同様にする中で、一本目の出来具合いを見ようと、水洗いしたフィルムを伸ばしたのですが、どうも変です。形がわずかについているだけなのです。
 見事な失敗でしたが、その時は理由は分りませんでした。温度も時間もきちんとしたのに、ただゝ首をかしげたくなるだけでした。そして二本目も同様に失敗…。
 がっかりしながら、現像液と定着液を見たのですが、何も変化はありませんでした。しかし何か変、定着液にいつもの臭いがないのです。
 これはおかしいと思い、朝に出した箱の中を見てみました。すると何のことはない定着液の粉末と思って使用していたのは、コピラールというスライドを作る時の現像液だったのです。
 袋に書いてあった品名をしっかり読めばよかったものを、慌ててやった為にとんだ大失敗をやらかしてしまいました。後はもう一度撮り直しをせざるを得ない派目に。
 もう一本、キリンの分娩シーンを撮ったフィルムが残っていました。が、完全に自信をそう失、カメラ屋に出して現像してもらいました。
(佐野一成)

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