でっきぶらし(News Paper)

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99号(1994年05月)9ページ

明日を信じて◎タンチョウ、産ませられなくて

北海道を象窒キる鳥を上げろと言われれば、鳥類にそう詳しくない人でもタンチョウ(ツル)の名が出てくるのではないでしょうか。冬場から春にかけて、新聞、ラジオ、テレビなどでしばしば取り上げられています。
美しさに加えて数の少なさ、それに伴う保護の必要性が強調されて、華麗に舞う姿が紹介されます。銀景色に群れる姿は、詩的情感を抱かせずにはおきません。
かつては、動物園においても入手は困難でした。理由は単純明快。先程に述べた数の少なさです。ある園でタンチョウが飼育され始めたのであれっと思うと、それは中国からの「親善使節」ってこともありました。
そんなタンチョウが徐々にながら数が増え始めて、当園においても飼育できるようになったのは何年前でしょう。十年は経つでしょうか。
ペアの相性がよかったのでしょう。繁殖も思いの他スムース、自称記録マンでもある私はタンチョウの親にレンズの先を突っつかれながらも、どれほどシャッターを押し続けたことでしょう。
タンチョウと言うツルは想像以上に強い繁殖力を持っていたようでした。朗報は飼っている園全てと思えるぐらいに聞かれ始めたのです。
となると、次に問題になってくるのが近交係数です。平たく言えば、血縁関係の濃いペアの繁殖は避けることが望まれたのです。
当園のペアは仲のよいペアながら、近交系数はかなり高いようでした。結果は、増やしてはならぬのです。
でも、卵は産みます。切なくあるものの、とられた方法は卵のすり替え、いくら抱いても暖めてもかえらぬニセモノの卵とすり換えたのです。
できるだけ近い将来、血縁関係のない者同士での産卵を望みたいものです。動物園ででも順調に増えている今、その夢はきっと叶えられるでしょう。願ってやみません。
(松下憲行)

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