でっきぶらし(News Paper)

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138号(2000年11月)8ページ

〜病院だより〜 【動物園獣医のある日 〈 後 編 〉】

 ホンシュウシカの右奥、池の中に小さな小島があります。そこは、ジェフロイクモザル夫婦の居住地。昨年寝室の暖房施設改修工事に伴い、一時病院に収容したクモザル夫婦、捕獲時の精神的影響なのか収容翌日流産をしてしまいました。その彼女が今年の1月10日に目出度く二世を出産、午後3時頃の出産でした。日本平動物園での21世紀第2号の出産でした、第1号はシロガオサキの子でした。出産後子供はすぐに母親の胸にしっかりとしがみついていましたが、臍帯が切れずに子供から40cm位釣る下がった状態で、あのままの状態でもし子供の首に巻き付いたら大変、早く母親が切ってくれないかと心配していたが2、3時間後には切れていました。さすが母は強、(何故か頷いてしまった)これから、子供中心の生活が見られると思うと心もウキウキ!
 毎日朝の巡回の時の光景だが、担当者が餌を彼等に与えるのを遠くの方からじっと見つめ待ち構えているものがいます。その数は数十羽、クモザルが大好物を取り食卓に戻ると、その後一斉に黒い大群がおこぼれに預かろうと飛来してきます。私は、「こら、泥棒いい加減にしろ」と罵声を投げかけ追い浮ィうとするが、当のクモザルはそんなことお構いなし。あ〜 「カラスの奴ら」 毎年数点の動物たちがこのカラスの犠牲になっている。

 坂を下ると左手にバーバリーの丘が見える、彼等もシカと同様我々獣医は天敵のようである。素通りするだけでも遠のくが、吹き矢の筒や、棒きれなどを持って通ろうものなら、一斉に逃げまどう彼等、あ〜淋しい!
 足早にコウモリ絵の入り口をくぐり夜行性館に入る、ぐるーと見渡し今日もみんな絶好調と納得しながら、「フェネックの第二世が待ち遠しいな」と溜息をつく。

 館を出るとシロサイの運動場が目に入る、サイタロウが亡くなってから未亡人となってしまったサイコにも、今年1月24日新しいパートナーが山口県の秋吉自然動物公園から婿入りしてきた。1才半年下の雄だが、このペアーに早くも二世誕生を期待してしまう、まずはお見合いから。暑い夏には大好きなドロンコ遊びも出きるように土も入れ替えたし、誰よりも早く夏の訪れを待っていることだろう。

 マレーバクの「しんちゃん」彼の悪い癖は、歩様時右後肢のつま先を地面に蹴りつけながら歩くことだ。このため肉球と爪の間が擦れ皮膚が赤く腫れ、またひび割れがしたりして跛行してしまう。このため担当者がクッション代わりに落ち葉を運動場に敷くなど工夫をしているがコンクリートの所に来るとまた悪い癖、苦労してテーピングしても2、3日でとれてしまう。いつも担当者と顔を見合わせ何か良い靴下はないものかと?

 小型サル舎を過ぎるとエリマキキツネザルが目にはいるが、夫は皮膚病と脱毛で病院に入院中、昨年回復し一度退院したが環境の影響か、それとも夫婦間の問題なのか再び同じ原因で入院、今ではすっかり病院の番犬になりつつある。困った亭主だ。

 子供動物園ではポニーのポンが昨年の暮れから風邪をひき高熱が続ていたが、担当者の手厚い看護と薬が効を奏し快方に向い熱も安定してきたが、今だ痰が詰まっているような咳を時々する、どうも喘息持ちのようだ。人間なら吸入も可能だが、相手は馬だからそうもいかない、無理せず暖かくなるまで養生するしかないようだ。!

 シセンレッサーパンダたちも高齢化の波が迫っているため目が離せない。高い木の上で昼寝をしているが、寝ぼけて木から落ちないでほしいものです。落ちると痛いぜ。

 昨年オープンしたオートチェアーに乗り一路爬虫類館へ、一歩唐ン入るとそこは高温多湿亜熱帯の世界。私自身未だ見たことがないことがある、それは蛇が機嫌がいい時ニコリとすることです。蛇が笑う*そんな馬鹿な?。昔馬が笑うという歌があったように記憶しているが、馬が笑う、私はあると思います。なぜなら、我が家のポニーがそんな仕草をすることがあるからです。・・・・・

 ホッキョククマのジャック、最近動きが緩慢で、足腰が大分弱ってきている、年齢も関係しているがそれだけではないようだ、近々精密検査をしなければならないと検討中。

 カルフォルニアアシカのレンジ君、そろそろ乳離れをしなくてはと声を掛けるが本人曰く・・・・・。
 こんな多くの動物たちに囲まれ、今日も園内を健康第一を掲げ駆けずり回る我々です。
                       ( 海野隆至 )

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