でっきぶらし(News Paper)

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107号(1995年09月)12ページ

あらかると 「オランウータン ベリーのそわそわ」

 オランウータン、オスのジュンは投薬を続けたおかげで、小さい頃より悩まされ続けてきた鼻汁や咳込みのほとんどがなくなり、健康状態の目安となる、食欲、排便、行動などはすこぶるいい状態です。が、ただ一つ、子作りの為の欲求が全くと言ってよいほどなくなってしまっています。
 第一子のジュリーができるまでの放飼場での愛の交換は、担当者が赤面しその場にはいられないほどしつっこく、メスのベリーを片時も離そうとしなかったぐらいです。入室時も、それぞれの部屋に入れるのに苦労させられました。ジュリーを出産した後にベリーの性周期が回復して、それではと放飼場で一緒にしても、ジュンはベリーに興味を示さなくなっていました。お互いに体をくっつけあっているのが見られないのです。その為か、ベリーはジュンに相手にされなくなってしばらくすると、その時の相手として担当者を選ぶようになりました。排卵日より一週間ぐらい前になると、初めの二、三日は誘う感じで逃げ、その後の二、三日は長靴や作業服のあちこちをいじくりまわすのです。排卵日の前日と当日。毎朝の体温測定時にはベリーと私は向かい合って座り、ベリーの脇に体温計を入れてしばらくじっとしていなければなりません。その間、ベリーは私の顔に軽く口を何回も繰り返しつけたり、襟首を広げあごの下の方まで同じことをしたり、手を入れてきて胸の辺りをいじったりと、体温測定の結果が出るまで私が動けないのをいいことにそれをやり続けるのです。
 でも、それもその日が過ぎるとパタッとなくなり、いつものあっさりとしたベリーに戻ります。しかし、私に対してとるその時の行動を何故ジュンに向かってやらないのでしょう。もしやれば、ジュンはその気になって相手をしてくれそうに思うのですが…。
(池ヶ谷正志)

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