でっきぶらし(News Paper)

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110号(1996年03月)8ページ

動物の仕草あれこれ?V(草食獣編)【サイの戯れ】

 角と角を向け合えば、ケンカ、トラブル、と思われるでしょう。ましてや双方が傷を負い血だらけになったりすれば、疑うことなくそう思い込んでしまわれるでしょう。
 しかし、サイに限って言えば、それは間違いです。完璧な誤解である、と断言してほぼ差し支えないでしょう。
私の見る限りでは、非常に仲のよいペアです。日なたぼっこも二頭いっしょで、歩調を合わせてるかのようにのっしのっしと歩く様などを見ていると、何となく微笑んでしまいます。
 しかし、ある一定の周期をもって、このサイのペアは角をぶっつけあいます。徐々に激しさが増してゆき、ひどい時は双方の体に角による切り傷で出血も見られます。
 「飼育係のおじさん、サイがケンカしている。何とかして」と言われるのは、たいていそんな時です。双方二トン以上もあるのがやり合うのは壮大ですが、ケンカと思ってしまえば悲惨に見えてしまうでしょう。
 いろんな習性があるものです。あれが愛情表現だと言っても信用してもらえないでしょうが、ああしなければ、彼らは性的に興奮しないのです。双方が血だらけぐらいにならないと、恋心は燃え上がらないのです。
 彼らは古い時代の生き残り、つまり「生きた化石」と言われる動物群です。形態だけではなく、愛情表現すらも古い時代の名残りをひきずっているのかもしれません。
 バーバリシープにしても、シカの類いにしても、角と角をぶっつけ合う時は、たいていはメスを奪う為の、群れのリーダーになる為の、あるいは守る為の闘争です。負けたほうは、群れから去ってきます。
 サイは、角の質からして違います。鼻の部位が盛り上がってできる角は、いわゆる“毛”の固まりです。万が一事故などでポロリと取れても、彼らは痛くもかゆくもないのです。

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