でっきぶらし(News Paper)

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136号(2000年07月)13ページ

〜友の会コーナー〜 【アメリカの動物園を見学して】 佐渡友 章子

 今回私は、日本動物園水族館協会のツアーで、アメリカのアニマルキングダム・セントラルパーク動物園・ブロンクス動物園を見学してきました。実は出発前、動物園なのに暑い時期に行くなんて・・・とか、ああまた1日中動物園なんだろうな・・・などと思っていたりしましたが、そこはさすが遊び好きなアメリカ。私のような凡人でも、しっかり1日中いても飽きさせない、いわゆるテーマパーク的動物園(!?)でした。
 特にアニマルキングダムとブロンクス動物園は、とにかく広い。大きくエリアが分かれていて、地図を見ると東京ディズニーランドのよう。でもその中の一つのエリアは乗り物に乗って見学できます。またそこでのアナウンスがとても面白い。とても抑揚のある話し方なので、英語が全くだめな私でも少しどんなことを話しているのかは分かりました。
 そして、現地からそのまま持ってきたかのような展示。一つ一つが広いのもありますが、中にある植生にも気を使っているそうです。大きな倒木、つるなどジャングルさながらの茂みから、ちらっと見えるオカピやゴリラなど、見慣れていても感動を覚えます。草食動物でも芝生でいっぱいだったり、池やちょっとした滝があるなど、見ていてホコリっぽいと感じる展示はほとんどありませんでした。中でも1番驚いたのが、ホッキョクグマの一角に定期的に落ちてくる(かき)氷の山。規模で言ったら日本平で落とす氷の方が大きくて圧巻ですが、それを自動的に時間で落としてしまうところがすごいと思いました。また、その氷の山の中に肉を隠しておいたりするところを見ると、人間への見た目重視ではない、動物のためのシステムであることに、見ていて心から安らげるのでした。

 雰囲気作りには特に手が込んでいて、電柵は一見するとただの草のように作ってあったり、またコンクリートの地面に本物の小枝を埋め込んだり、葉っぱの模様やさりげなく動物の足跡もあったりして、周りの木々も含めまるで現地の小道のような作りをした通路もありました。でもそういった本物志向だけではなくて、ワニなどをかたどったカラフルなベンチ、たくさんの動物の絵が描かれている大きな看板など、それぞれにメリハリのあるデザインがされていました。
 このように展示に自信を持って工夫を施すには、やはりそれなりに現地への調査を行っているそうで、それらを裏付けるメッセージ性の高いパネルがたくさんありました。なかでも特に力を入れていたのが、ブロンクス動物園にあるゴリラの「コンゴの森」です。  まるで科学館のようで、1階が展示室で2階が教室などを行う部屋になっています。そこの1枚のガラス窓を隔てて向こうが広大なゴリラのエリアになっているわけですが、ほとんど180度の大きなガラスごしに見る展示は、まるで大阪海遊館の大きな水槽を見ているよう。印象的だったのは、日の光に当たった緑がとってもきれいに見えたことと、たくさんのゴリラがいたこと、そしてそれにも関わらずガラスがきれいだったことです。

 そんな展示に感動する反面、その周りにたくさん掲げられているパネルには、現地で捕獲されてしまうショッキングな写真や、環境破壊などで数が減っているというカウントがなされていたりします。しかしそれだけではなく、現在の保護活動や、また今後どうするべきかなど、お客さんそれぞれの考えを引き出すようなパソコンなども置かれています。
 今回残念ながらボランティアの方にお会いできませんでしたが、解説員の方を多く見かけました。確かにこれだけ多くの情報があると、逆にだれも解説員の方がいないと活用しきれない感じもします。まだまだ見所はたくさんありましたが、とにかく、今までに見たオーストラリアやシンガポールの動物園と比べても、これほど環境問題に対して具体的に数字で表してあったのは初めて見たような気がしました。

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