でっきぶらし(News Paper)

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90号(1992年11月)6ページ

サルのケンカ【アカテタマリン・宿命の対決】

 アカテタマリン夫婦親子四頭仲睦まじく、実に穏やかで平和な光景です。一年近く前に兄弟間のすさまじい決闘があったなんて、どうやって信じられるでしょう。
 彼らは、野生では数頭の群れで生活しているそうです。その中の最も優位性のあるオスとメスの間だけ繁殖し、残りのメスは排卵さえうながされないそうです。
 逆に考えれば、それがトラブルの目なのでしょう。下位のオスはチャンスがあれば上位のオスを倒すことを考えるでしょうし、メスだってそれは同じでしょう。
 アカテタマリンの末っ子の二頭、同じ日に生まれオス親、メス親の愛を精一杯受けて育ち、互いによい遊び相手でもありました。
 でも、残せるのは一頭です。成獣になれば否応なく決着をつけねばなりません。飼育下であっても、避けられない宿命です。
 一才半ぐらい、一人前近くになった頃、どちらかの妻となるメスを迎えました。火種となるのは承知の上、成りゆきに任せるしかありません。死ぬまではやり合いません。
 兄弟、しかもまだ亜成獣。オス二頭、メス二頭の不釣合いのコンビは意外に長持ち、一年近くは持ったでしょうか。
 しかし、所詮そこまででした。ある日突然激しく表れたのは、そこに至るまでに相当深く屈折した経過があったからでしょう。
 いつもとは全く違う声、怯えきった悲鳴が聞こえてきてオスそれぞれを見ると、勝っているほうと負けているほうがまるで逆の有様でした。樹木から床上のオスを見据えているオスは、唇はめくれ急所の睾丸の皮までもがべろりとめくれているのです。が、にらみすえる目には迫力があり、床上にはいつくばっているオスの目には恐怖がくっきり。もう同居させられません。
 恐らく不意に喰らわした最後の逆襲だったものの、結局は力負けしてしまったのでしょう。三世が生まれたのは、それから約一ヶ月後。勝ったほうのオスの子と考えるのが妥当でしょう。

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