でっきぶらし(News Paper)

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90号(1992年11月)4ページ

サルのケンカ【クロキツネザル、しっとして】

 アフリカ、モザンピーク海峡の東側にある大きな島、マダガスカル島に生息するキツネのような顔をしたこのサルの変わった習性と言えば、メスのほうがオスより優位にあることです。オス同士の間でどんなに優位にあっても、最も下位にいるメスの下に甘んじなければなりません。
 で、その習性が、どんな形でトラブルとなって表れてくるのでしょう。オスとメスの優劣が逆転しているほうが、トラブルは起きにくそうなのですが…。
 メスはキーパーを恐れはしませんが、かと言って好きでもありません。反対に小さい時から人の中で育ったオスのほうは、キーパーのみならず、人間大好きです。
 だもので、金網越しながら「クロちゃん元気。よしよしよし」とつい可愛がってしまうのです。オスは御機嫌になってとびきりの愛嬌を振り巻きますが、これがメスには気に入りません。しっと心をあおってしまいます。
 その場を去ってしばらくすると「ウギャギャアー」「ガガガー、グォグォグォー」と怒声とののしりが入り混じったような唸り声と悲鳴が交錯します。
 少々の独断を入れて翻訳させてもらうならば「何よ、いやらしい。あんな人間なんかにこびを売ってみっともない」「だって、やさしくしてくれるのだもん。俺は、楽しいし好きだもーん」「もーこの分からずや。少しは男としての意地ぐらいは持ちなさいよ.憎たらしい、こうしてくれる」と、まあこんな具合になるでしょうか。
 私、二、三度これをやって意味が理解できて、それ以後は意識的にオスを無視するようにしています。ヤキモチの恐さが身に染みている訳ではありませんが、余計なことはしないほうが賢明でしょう。

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