でっきぶらし(News Paper)

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134号(2000年03月)5ページ

ダンボールはストレス解消用

 ある日の午後、私がオランウータンの放飼場の前でオスのジュンを観察していると、後ろからお客さんの声がします。「あらまあ紙くずだらけ、誰がやったのかしら。悪い人がいるものだわねー。」とです。
 ちょっと待って下さいお客さん、それは私が遊び道具として与えたものなのです。
 と言うのは、相方のベリー(メス)が体調不良の為に長期の室内暮らしで、1頭で放飼場に出る日が続いています。隣のゴリラのゴロンも怪我の治療で不在です。
 外に出ても遊び相手もおらず全くのひとりぼっちです。暇つぶしにと思い、ダンボール箱を差し入れてあげたのです。
 これならバラバラにしても怪我もしないし、例えお客さんに投げたとしても安全だし、寝室に持ち込んでも心配ありません。掃除が少し大変になりますが、なに私が手間を惜しまなければいいのです。
 これが大当たり、ジュンは大喜びで放飼場に出てゆくのが早いこと早いこと。私があらかじめ、ダンボール箱の中に朝食として、ハクサイ、リンゴ、ピーナツを入れて放飼場の真ん中辺りに置いておきます。
 箱の中から餌を全部取り出し、それからおもむろに箱の一カ所を切り開いて広げます。それをこぶしで叩いたりして平らにすると、どっかり座り込んで周りを少しずつ内側に曲げることに集中します。
 この行動は、野生のオランウータンが枝葉を集めて寝床を作っているようです。しかし、それも昼前までのことです。 やがて、こぶし大ほどの大きさに破り始め、大きなダンボールはあっと言う間にただの紙くずに・・・これが真相です。 皆さん、このように物をびりびり破り捨てると、胸がすっとすると思いませんか。私はジュンのこの行動は、ストレスの解消に多少は役立っていると思うのですが、いかがなものでしょう。     
           (池ヶ谷 正志)

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