でっきぶらし(News Paper)

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84号(1991年11月)4ページ

さるの話題を追って【ピグミーマーモセットの糖尿病】

 年に二度、多い時には三度も出産していたピグミーマーモセットの母親が死にました。多分に多年に渡る出産の疲れや年齢的なものであろう、と最初は軽く考えていました。
 解剖にも立ち合って、腸重積等内臓がいろんな病気に冒されていたのが、医学的には素人の私にもそれは分かりました。が、問題はそこにはなく、解剖所見だけでは分からないすい臓にありました。
 「すい臓を調べてもらったら、糖尿病の疑いが出た。他の個体も注意するように。できたら尿が欲しい。」獣医のこの言葉に正しくガ―ン。頭をハンマーで殴られたような気持ちとはこのことです。
 マーモセット類の餌の糖質の高さは、重々承知していました。しかし、体が小さくて軽い彼らは、運動量の多さはサル類だけで比しても他種の数倍に及びます。だものでそれぐらい、つまり高たん白高カロリーのほうがよいのでは、と考えていました。
 ピグミーマーモセット以外では、それは間違いではなかったようです。よく食べ、よく動き、かつコモンマーモセットやアカテタマリンは驚異的なペースで出産してくれました。
 しかし、衝撃を与えられた目から見ると、確かにピグミーマーモセットの運動量は少ないのです。木の登り降りはとてつもなく素早いものの、他の種のような木から木へ跳び移るような行動は見られません。エネルギーの消費量は、意外と少ないのかもしれません。
 よかれと思って増やしたヨーグルトも、災いに加わったのでしょう。母親に次いで一頭、又一頭と計四頭が同じ病気で死にました。
 長い間飼育係をやっていれば、悔いに悔やまれる出来事はどうしても生じます。これは正しくそれの最大級です。反省に反省、情けないの一言に尽きます。

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