でっきぶらし(News Paper)

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43号(1985年01月)9ページ

牛のあれこれ 

八木智子
 今年はウシ年なので、ここでちょっと牛について勉強してみましょう!!
 さて、あなたは牛を見たことがありますか?触ったことがありますか?近年私達のまわりで牛をはじめとして家畜にお目にかかる機会がほんとうに減ってしまいましたネ!!とても残念なことですが、牛そのものを見なくても私達の生活の中にはいろんな形で牛と接しているのです。
 牛乳、スキムミルク、バター、チーズ、ヨーグルト、加糖練乳、アイスクリーム、ラード、人工粉乳、肉、皮、そして角からは、漢方薬が作られています。
 では、牛の祖先を知っていますか?それは氷河期をすぎた新石器時代にヨーロッパからアジアの大部分とアフリカ北部にかけて広く分布、生息した『オーロックス』という野生牛だと言われています。
 イラン高原の北方、西トルキスタンのアナウの遺跡は、農耕分化を示す最古のもので、紀元前3000〜5000年と推定されています。ここから穀物の遺物とともに家畜牛の遺骨が発見されています。たぶんこの付近で、家畜牛への馴化が行なわれたようです。
 あなたは、牛の種類をどのくらい言えますか?牛の種類は、知られているものだけでも20種類ほどあり、地方種などを含めると500種余りの品種があるとされています。それらを利用目的で分けると、専用種(乳用、肉用種、役用種といった目的がひとつの品種)、兼用種(2つの目的を兼そなえた品種)、三用兼備種(乳も出し、肉もとれ、労役もするという、3つの目的をそなえた品種)の3つがあります。
 では、『乳はどうやってとるか』“そりゃ乳しぼりをすればいいんだヨ”でも、牛は機械じゃありませんから、年中乳房から乳が出てくるわけではありません。
乳が出るためには、妊娠、出産という過程が必要です。メスは、生後18〜30ヶ月で性成熟に達します。妊娠期間は280日前後です。そして出産後10ヶ月間乳を出し、その後3ヶ月間は搾乳しない(乾乳期)で、次の出産をするというくり返しで乳を出してゆきます。1頭の乳用種で一生の間に5〜6回の出産をします。
 乳量は、普通300日で5000kgほどですが、17000kgあったという記録もあります。乳用種には、黒と白のまだら模様のホルスタイン、乳脂率が5.5%と高いジャージー、他にガーンジー、エヤージャーなどがいます。
 肉用種には、スコットランド原産のアバーディーンアンガス、体重はメスで530kg。オスで900kg、1日1kg増えると言われています。他にヘレフォード、ショートホーンがいます。そして、我国特産の和牛、特に黒毛和種は、味が良いので世界的に神戸ウシ、伊勢ウシの名前で知られています。
 三用兼備種として発達したものにスイス原産のシンメンタールやブラウンスミスがいます。(現在は乳肉兼用種になっている)
 あなたは、いくつぐらい名前をあげられましたか。
 当園では、いつもはウシの展示を行なっていないのですが、今年は特別に1月1日〜15日まで生後40日のホルスタイン種の子牛を子供動物園で展示していました。この“モー君”はやんちゃ!!朝と夕方の2回、ミルクを容器に入れて飲ませていたのですが、なれないうちは飲みながら容器を押すので、ミルクがこぼれてしまい作業着はベタベタ!!口元へ持ってゆく高さを変えてみたり、角度を変えたり悪戦苦闘!!日がたつにつれて、お互いにうまくなりもうバッチリ!!オリ越しにしか皆さんと接することができませんでしたが、そのかわり記念撮影用の等身大の牛の絵は、大モテ!!家族で、お二人でと入れかわり立ちかわりポーズをとっていました。
 当園には牛の仲間としてアメリカバイソンがいます。彼らが暮から、なんとカゼをひいてしまいました。担当の鈴木飼育課員から『メリーが妙な咳をするんだよ!!』バイソン舎に行き、私がじっと立っているとなんにもしない。鈴木氏且く『いたいことをされると思っているんだよ!!』またしても獣医はきらわれ者。何度か足を運んでいるうちに聞きました。低い声でグゥフォ、グゥフォ…。
 翌日は、オスと直子が咳こみ、そのうち白っぽい鼻汁がみられるようになりました。でも、不思議に子供は元気そのもの!!3頭とも食欲は落ちませんでしたので、ビタミン剤を入れ、展示は舎外が暖かくなってから、入舎ははやめにと心がけ、寝室にワラを敷いて様子をみました。その結果、2週間でほぼ回復してくれました。アメリカバイソンを飼育して15年。カゼは初めての経験でした。今年の冬は、やはり寒いのでしょうネ!!

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