でっきぶらし(News Paper)

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279号(2024年09月)4ページ

タンチョウ*リスタート

 昨年からタンチョウ舎の担当になりました。担当替えのあった昨年4月の時点で、当園にはタンチョウのオスとメスが1羽ずついましたが別々に暮らしていました。実は以前から展示していたオスとメスのペアのうち、メスの個体が2022年9月に亡くなったため、それからは「ズワイ(オス)」を1羽で展示していました。もう1羽のメスは長い間非公開の施設で飼育しており、こちらも1羽で暮らしていました。

タンチョウは元々群れで生活する鳥なので、このまま1羽ずつで暮らすよりも2羽で一緒に暮らせる方が良いだろうと思い、この2羽を一緒にする計画を立てました。しかしそれには色々と問題がありました。

まず、タンチョウは一度ペアになったオスとメスは一生添い遂げるといわれており、ペアだったメスを亡くした後のズワイが、新しいメスを受け入れるのか、またその逆でメスはズワイを受け入れるのか、お見合いをしながら慎重に見守る必要がありました。

また運良くペアが成立したとして、もし繁殖したら…?国内の動物園で飼育されているタンチョウは血統の管理がされています。今回の2羽は国内のタンチョウの中で繁殖の優先度が低いとのことでした。しかし幸い鳥類の場合は卵で生まれるため、その段階で取り上げることで比較的容易に繁殖制限ができます。繁殖制限をするのであれば、1羽でいるより2羽でいる方が社会エンリッチメントとして有益だと思われるので、予定通り2羽を一緒にすることになりました。

さて、まずは2羽の相性を見るためお見合いをする必要があります。ズワイのいる展示場を2つのスペースに分ける仕切りを取り付け、ズワイの向かい側にメスを連れてきました。メスは引っ越してきたこともあり新しい場所にも慣れてほしかったので、この状態で1週間くらいは様子を見るつもりでした。しかし、なんとお見合い開始2時間後にはメスが仕切りを突破してズワイの方に入ってしまい、それに驚いたズワイに盛大につつかれ、飼育員が間に入りなんとかまた2羽を分ける、というハプニングからのスタートでした。

その後は思ったより落ち着いていて、4日目くらいからは餌もよく食べるようになりました。ズワイの方は、最初にメスが突破してきた時以外はいつも通り落ち着いた様子でした。しかし初日のハプニングが衝撃的すぎて、ズワイもかなり怒っていたようだしこの2羽がペアになるのは難しいかもな…と半分諦めつつ、まずは1か月くらいお見合いを続けることにしよう…と思っていたのですが、2週間後にまたメスが仕切りを突破し、ズワイの方に入ってしまいました。他の飼育員が目撃して教えてくれたので慌てて現場に向かうと、なんと今度はズワイは全く攻撃せず、メスもなぜか落ち着いており、まるで昔から一緒にいましたけど?といった様子。驚きましたが思ったより早く2羽が馴染んでくれてほっとしました。仕切りのせいで2羽が狭い思いをするのも可哀想なので、その場で仕切りも撤去しました。

そんなこんなで飼育員が思っていたより早いペースで2羽での飼育展示がスタートしたのですが、ここまで読まれてきた皆様、何か違和感を感じていないでしょうか?…はい、「ズワイ」と「メス」。実は長い間非公開施設で飼育されてきたメスには、名前(愛称)が付いていなかったのです。せっかくペアになり2羽で展示できるようになったのでメスにも愛称があるといいなと思い、いくつか考えた中から動物園の職員に投票してもらい、「セイコ」と名付けました。タンチョウなので日本っぽい名前が良かったのと、ズワイとも関係ある方が良いかなと思い決まりました。個体紹介のボードも設置しましたので、ぜひチェックしてみてください。

(川合)

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