でっきぶらし(News Paper)

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259号(2021年04月)5ページ

「平凡な毎日に ちょっとしたスリルを」

 皆さんは、二本足で立ち上がることができ、穴を掘って群れで生活する動物と聞いて何の動物を思い浮かべますでしょうか。え?ミーアキャット?確かにミーアキャットもそうですが、今回お話ししたい動物ではありません。今回は、プレーリードッグについてお話ししたいと思います。

 プレーリードッグは北アメリカ原産のげっ歯類、ジリスの仲間です。「コテリー」と呼ばれる群れを作り、草原で穴を掘って生活しています。巣穴の中は寝室やトイレ、隠れ部屋など、何部屋にも分かれています。日本平動物園でも、プレーリードッグの放飼場は土になっており、自由に穴を掘ることが出来るようになっています。穴掘りに夢中になって、土だらけの顔で部屋に帰ってくることもしばしば…そんな様子をほほえましく見ていたのですが、ある日、驚きの光景が目に飛び込んできたのでした。

 それは夕方の閉園後、プレーリー舎の作業も終わり事務所に戻ろうとしていた時の事。ふと、放飼場に目をやると、なんだか違和感。シュート(部屋から外へ出るための扉)の前には、プレーリーたちが土を部屋に持ち込まない様にコンクリートブロックを置いてあるのですが、その隣に穴が開いていました。(もしかして…!)とってもいや~な予感がしたのでプレーリー舎に入り、放飼場へ出て確認してみると、その予感は的中。ブロックの真下にトンネルが掘られていました。真下です。ブロックと土が浮いている状態でした。幸い土が固いためトンネルの形を保っているものの、ブロックがコンクリートで重いので、いつズドンと落ちてトンネルが潰れてもおかしくない状態でした。ちょっと待ってくれよと、なんて危ないことをしてくれているんだと。立派なトンネルでしたが、これは見逃せません。すぐにブロックを外しトンネルを埋めました。これで大丈夫。そう思った自分が甘かった…。

 数日たったある日、放飼場は大丈夫かな?と覗いてみた所、2つあるブロックのどちらにも隣に穴が。また危ない掘り方してる!!しかも今度は2ヶ所です。なぜそんなにブロックの下を掘りたがるのか、疑問でなりません。このままでは何回埋めてもまた掘ってしまいます。何とかならないものか、考えた私はブロックの横に木を置いてみる事にしました。穴があった場所に木があれば諦めてくれるだろう、そう思ったのです。

 そしたら何という事でしょう、ブロックの下を掘らなくなったのです!ですが、その代わりにブロックの隣以外に置いてある木の下を掘るようになりました。前までは物の真下にトンネル掘ることなんてなかったのに、どうして?物の下にトンネル作るの流行ってるの?これ流行らせたの誰ですか。木の下なら、ブロックより軽いのでさほど心配はありませんが、やはり放っておくわけにはいかないので埋めました。

 こんな感じで、今プレーリーvs飼育員の戦いが繰り広げられているのです。これが一時的な流行りなのであれば、なるべく早く終わってほしい。そう切実な思いを抱きながら、今日もせっせとトンネルを埋める担当なのでした。

(望月 利紗)

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