でっきぶらし(News Paper)

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229号(2016年04月)3ページ

普通って本当に普通でしょうか②

①の続き 

 更に、ネコの話からは逸れますが、こんな事実があります。
今から御話する事は、例えば動物園に所属している飼育員や獣医達にとっては今更いうまでもない、常識以前の話ですが……実は動物(生物)の世界は、【メスを中心に(特に繁殖に関して)】構成されています。オスが中心ではありません。メスを中心として動物(生物)は色々な行動をしています。メスとオスの差異がある生物ならば、まず例外なく、判りやすくいえば群れをつくる性質をもつ生き物は皆、ゾウもキリンもライオンもハチやアリも女系です。つまり生物とは群れをつくっているものならば女系で、もっとかみ砕いて人間的に表現すれば、事実上群れとはメス達のもので、オスのものではない、といえます。これは、群れをつくる習性をもつ種類の生物だけではなく、普段は単独で行動する生物も同じで、繁殖行動を主にして観れば、オスには繁殖相手を選択する自由?はあっても決定権はなく、メスには繁殖相手となるオスに対して選択権も決定権もあり(つまりメスがオスを選んで繁殖相手を決定しているのです)、だからこそ、色々な種類の生物のオス達は、それこそ必死になって求愛行動と呼ばれるアピール行動をします。アピールをして成功し、メスに選んで貰わなければ、自分の遺伝子が残せないから…繁殖に関する最終決定権が、オスには無くメスの方にあるから…。
ちなみに人類が、この範疇に収まるかは私には判りません。人類が女系か男系かも知りません。しかし、明らかにいえるのは、人類も遥かな過去、その歴史の初期・黎明期(れいめいき)に群れを造った段階で、母系社会・女系社会からスタートしました。
この動物(生物)のメスとオスのポジション?、を改めて考えた時、この記事の冒頭で申し上げた【普通】という表現が再浮上してきます。
改めて【普通】について…。殆どの方々は、動物(生物)がオスを中心とした生態をもっていると考えている事が多いと感じますが、ここまで御話した様に、その【オス中心】も、現実的ではありません。つまり、沢山の人々がオス中心と考えている様々な生き物の世界も、その実態は、【オスが中心に存在する事は普通ではなく】架空の話で…メスが中心の位置に存在するのが生物としては【普通】なのです。では、どうしてこれ程、動物(生物)の現実の姿と多くの人々の抱いている、言うなれば動物(生物)に対する【普通】の認識や概念にズレが生じているのでしょうか?
それには幾多の理由があるでしょうが、おそらく最も大きな原因は、殆どの人々がある事柄について一度思い込んだら、もう、その事柄についてあまり疑問を持たない…そしてその思い込んだ事柄を、大多数の人々が同じ様に認識していれば余計に疑問を持たない…疑問を持たないから調べない…この繰り返しであり、更にそれを大人から子供に、年長者から若年者に伝達・継承してしまうので、その思い込みが本当は事実からどんなにかけ離れたものだとしても、それが事実ではない・現実的ではない事に気付かないまま、どんどん次世代にバトンタッチされ拡大されてしまうからだと思います。
ですから、もしかしたら【普通】とは簡単には口にしてはいけない言葉かも知れません。何故ならば、その【普通】…ただ動物(生物)に限定した今回の話の中でさえ、本当は【普通】ではない事が含まれており…【普通】の基準そのものが、実は現実や実態に照らし合わせた時、非常に危うい事が多いと思うからです。それ故に、【普通】とは、とてもとても怖い表現ではないでしょうか?

飼育係  長谷川 裕

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