でっきぶらし(News Paper)

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228号(2016年02月)7ページ

スポットガイドだより②~アムールトラ~

スポットガイドだより② 12月20日アムールトラ

12月20日・13:30より、アムールトラのスポットガイドを行いました。
 御存知の方々もいらっしゃるでしょうが、このアムールトラ、トラの仲間では最大種で、事実上、ネコ科の中でも最大種です。よくライオンの方が大きいと思っている人がいますが、統計的にはアムールトラの方が大きいと言われています。これは、幾つかの例外はあるものの、おおむね生物は同じ種であっても寒冷地に生活圏をもっているものの方が大型化する傾向にあり(ベルクマンの法則といいます)、北方に生息しているアムールトラは(寒~いロシアのアムール地方に棲んでいます。ですから、名前がアムールトラなのです)この一例だと考えられています。
 昔は、ロシアの広い範囲や中国・北朝鮮にも生息していたアムールトラですが、現在はその数がもの凄く激減しています。カン?の良い方ならば御気付きでしょうが、その理由は人類による環境破壊・乱獲・密猟です。環境破壊の代表例は、彼らの生活圏であるタイガと呼ばれる森林を色々な理由で人間が広範囲に焼いてしまったり、パイプライン敷設で彼らの生活圏を分断・寸断してしまった事…そしてそれよりもなお酷いのが、乱獲・密猟です。この、乱獲・密猟の御話をすると、大抵の方々が『ああ。トラの毛皮が目当てだからだ』と考える様です。しかし、乱獲・密猟の最も大きな目当ては彼らの【骨】であると言います。『骨なんかどうするんだ?』ごもっともな御質問です。実は古くからトラの骨は主に漢方薬の原材料として用いられおり、しかも信じられない様な高値で取引されてきたという歴史があります(サイの角などもそうです)。
 本当に効果があるかどうか疑問ですが、トラの骨は滋養強壮剤とか精力剤の高価な原料に使われてきたので、膨大な数のアムールトラ達が、それこそ無計画に乱獲・密猟されてしまったのです。
 【利害】人類の拭っても拭いきれない黒い歴史と過去は、この二文字でほぼ片付けられるくらい、沢山の悲劇を生み出してきました。アムールトラに代表される生物達は、この人類の【利害】によって数を減らし、滅び、今この瞬間にも絶滅しかけているのです。
 付け加えれば、昔からアムールトラと生活圏を共にしてきた先住民・少数民族の方々は、彼らに干渉せず、アムールトラの方も余程の事が無い限りそうした人々を襲ったりしなかったと伝えられています。トラと先住民・少数民族の方々は、ただ…互いに離れた位置から見つめ合うだけで、争いらしい争いは発生しなかったそうです(乱獲・密猟を行ったのは主に他の地域の人間達や外国人達です)。
 人類と、それ以外の生物達。今回のガイドは、その関係性を改めて考えさせられるものとなりました。
 (飼育係 長谷川 裕)

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