でっきぶらし(News Paper)

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210号(2013年02月)3ページ

動物教室実施中!

 ふれあい動物園の飼育担当者は、ときどき先生になります。それは、「幼児動物教室」での事です。幼児動物教室は、幼稚園や保育園などの年長さんが対象の教室です。ウサギ・ヒヨコのだっこ、ヘビと記念撮影、ヤギに餌やり、乗馬、鳴き声クイズ、といったプログラムを通して、動物と仲良くなることを勉強します。日本平動物園の開園とほぼ同じ、40年以上続いている教室で、子供のころに参加した人たちは今ではお父さんお母さん世代になっています。親子2代で動物教室に参加した、という人もいるかもしれません。
 動物教室は4月から7月、そして9月から11月の平日に実施しています。実施対象になっている日は、おかげさまでほぼ予約で埋まっている状況で、毎日元気な子供たちがふれあい動物園にやってきます。元気すぎる子供たちに圧倒されてしまうときもあり、動物教室の先生をやるには、なかなかパワーがいります。ですが、ヘトヘトになってしまってもまた明日もがんばろう、と思えるようなことが起きることもあります。
 ある日の動物教室で乗馬をした時、私は子供がウマに乗る時の補助をしていました。その日のいちばん最後にウマに乗る順番が回ってきたのは、おとなしい感じの男の子です。いざ大きなウマを目の前にすると「怖いから乗らない・・・」と座り込んでしまいました。引率の先生と二人で「少しだけ触ってみようか」「鞍に乗って写真だけ撮ろうよ」と、なだめすかしているうちに、男の子はなんとかウマに乗ることができました。ゆっくりウマが歩いている間、男の子は緊張して固まっていましたが、なんとか乗馬をやり終えました。男の子がウマから降りる時、ウマとウマ乗り場の間に隙間があったので、私は男の子を抱きかかえて降ろしました。その時、男の子が思いのほか強い力でギュッと私の腕をつかんだのです。その手に入っていた力は、そのまま男の子の緊張していた気持ちを表していたと思います。怖いと思う気持ちと戦って、それでも勇気を出してウマに乗るために、男の子は本当に頑張ったと思います。引率の先生は、乗馬できたことを、その子を抱きしめてほめてあげていました。
 ウマに乗ることができるのは1分にも満たない時間であり、平気でどんどん乗ってしまう子供も多いです。しかし、あの男の子にとっては、乗馬は大冒険だったと思います。そして、少しだけ成長できた瞬間でもあったのではないでしょうか。動物教室には、動物に触れて命の暖かさを知ってもらう、というねらいがあります。そのねらいの通り、教室は動物の暖かさを知ってもらう場であるのですが、それと同時に、子供たちの挑戦と成長の場でもあると感じています。「ヤギにご飯をあげられたよ」「ウサギを上手にだっこできたよ」と、教えてくれる子供たちがとても良い笑顔なのは、「怖い、でもやってみたい」という葛藤を乗り越えることができたからだと思います。そんな様子を見るたびに、動物教室のやりがいを感じます。40年以上もこの教室が続いてきたのは、先輩飼育員たちも私と同じようなやりがいがあったからなのではないかと思います。子供たちに元気をもらいながら、これからも教室を続けていきたいです。

動物担当 鈴木 直美

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