でっきぶらし(News Paper)

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206号(2012年06月)1ページ

コンドルのダンスとヘビの鍵盤

 春から夏にかけての季節、コンドル舎の前を通りかかると、変わった音を聞くことがあります。たとえて言うなら、電車の自動ドアを動かすための圧縮空気をつくるエアコンプレッサーが「コトコト・・」と床下で動いている時の音によく似ています(ただし、私が若いころ電車通学していたころの記憶です。最近は電車にたまにしか乗らないので今の車両がこういう音をたてるか定かではありません)。両方の翼をひろげて止まり木や擬岩の上にとまり、頭をうつむき加減にしてゆっくりその場で回りながらこの声(というより音と表現したほうが合っていますが)を出すのです。最後に「プシュー」という空気が抜けるような声まで出すので本当にエアコンプレッサーだなあと思ってしまいます。
 これはコンドルの求愛行動でオス、メスともおこなうのが見られます。コンドルの夫婦は一生ペアが変わらないと言われますが、日本平のペアは最初来園したペアのうちメスが死んでしまったため現在のメスは2番目になります。オスは来園40年になり、2羽で仲よく暮らしています。過去何度か繁殖しているものの、最近数年はヒナの誕生がありません。コンドルは野生では1年置きにしか繁殖せず、しかも一回にかえす卵は普通1個だけです。ヒナが独り立ちするまでの期間も長くかかります。日本平で過去に繁殖した様子はコンドル舎の前にある看板で見ることが出来ます。またコンドルのヒナの姿が見られるといいですね。
 さて、は虫類館の日本産爬虫類のコーナーに「ジムグリ」というヘビが仲間入りしました。ジムグリは日本固有のヘビで、全長は70?から100?くらいになり、背中の色が薄い茶褐色をしています。おなか側は白地に黒の長方形をした斑紋がジグザグに入ってピアノの鍵盤のような模様をしています。これは元禄時代に流行したという市松模様にも似ているので、ジムグリのことを「元禄ヘビ」とも呼びます。もっともヘビの色や模様は、個体差や生息している地方によってずいぶん差がありますので、こういう模様ではないジムグリもいます。
 ヘビは小さいうちは成長したときと比べて派手な色や模様を持つ種類も多く、毒蛇と間違えられることもあります。
 ふれあい動物園にいる地味な色あいのアオダイショウも、子供のうちはハシゴ型の斑紋があってちょっと見るとマムシに似た模様をしています。マムシに似せることで敵から身をまもっているという説がありますが、斑紋のないアオダイショウの子供もいますのでややこしいですね。
 ヘビの色や模様は同じ種類でも個体差があると書きましたが、マムシでも標準的な「銭形」模様(展示されているマムシの模様です)からマムシ酒で有名な赤みの強い赤マムシや、なかには模様のないマムシまでいるので野外でヘビに出会ったときは識別に注意しましょう。手を出さないのが一番ですが。
 ジムグリの子供はオレンジの地色に黒い横じまが入ったきれいな模様をしています。
ジムグリという名前はこのヘビがよく地面の下や石の下に潜り込むことからつきました。
地面の下のネズミの巣を襲って、ネズミの子供を食べる習性があります。ジムグリの口は上唇が下唇の上に少しかぶさるようになっていますが、これはやわらかい地面に潜り込むとき口の中に土が入らないようにするためと考えられています。は虫類館の展示では、この習性のせいでどこかにもぐり込んでしまい、姿をなかなか見ることができません。観察するのには根気が必要なようです。

動物病院担当 菅野 展美

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