でっきぶらし(News Paper)

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198号(2011年02月)5ページ

42年間を振り返って

 正直言っていろいろ有りすぎて何を振り返ればいいのか分かりません。
 でも、一言で言うと「楽しかった」いろいろ有ったけど本当に毎日が楽しかったです。寝ていた時間を除けばほとんど動物園で過ごしたのではないでしょうか?
 休みにどこかに出かければ、他の動物園の見学に行く事が多かったし、海外旅行も殆ど動物園ツアーばかりでした。
 自分に退職の日が来ることなど考えもしませんでした。でも、いよいよその時期が迫ってきました・・・!
 高校を卒業し18歳で動物園の飼育係になって初めて担当した動物は「クマ」でした。ツキノワグマ、ホッキョクグマ、ナマケグマやマレーグマもいました。4年間担当しましたが、いろいろな思い出が有ります。
 ニホングマの月太やゴン太は小さなときに保護されミルクをやって大きくしました。月太はよく外に散歩に連れ出しました。大きくなって力もついて来たので外には出すなと言われていましたが。ある日園長に見つかってずいぶん怒られた事を覚えています。
 また、ゴン太は寂しがり屋で、外に出すと私の足下にぴったり寄り添って歩いていました。当時、堆肥場と焼却炉の担当もしていて、よく堆肥場にゴン太を連れて行き、私が作業をしている間は自由にさせていました。ある日大きなシイの木の一番上まで登って行き、こともあろうに昼寝を始めてしまったのでした。呼べど叫べど反応なし、とても私が登って行ける高さではなく、本当に困ってしまいました。でもよく見ると、寝ているような格好はしていましたが、時々私の方を見て居場所を確かめているようでした。もしかしたらと思い、帰る振りをして姿を隠してみました。案の定、しばらくしたらあわてて降りて来て「フォ、フォ」と声を上げながら後を追いかけてきました。かわいいのとホッとした複雑な思いでした。
 ホッキョクグマはとてもここには書ききれない程、たくさんの出来事がありました。中でも一番の苦い思い出は、メスの初代ピンキー(正式名称はユキコ)の死です。ある日オスのジャックとの間に交尾が見られました。それはしつこい交尾でずっとピンキーのお尻にくっついて歩いていました。「これで、妊娠出産の可能性が出て来た。」と勢いづいたのですが、当時のクマ舎には産室は無かったのです。園長に頼んで急遽産室を建設してもらい準備万端で出産を迎えました。
 しかし、ピンキーは出産どころか巣穴の中で死亡していました。しかも、お腹には赤ちゃんはいませんでした。ピンキーは狭い産室の中で動き回り衰弱してしまったのでした。今、ピンキーは剥製になって資料館の中にいます。ピンキーを見るたびに申し訳ない気持ちになります。また、今では考えられないような危険な事もやりました。いたずら好きのマレーグマのオスが頑強な爪で寝室のオリに溶接でついていた金網をはがし、そのはがれた金網の先端で背中に傷を作り、背中にソフトボールくらいのコブが出来たのでした。獣医に診てもらうと「傷が化膿して膿がたまっているから排膿手術をしなければいけない。」と言われ、今なら迷う事無く麻酔で眠らせて手術するのですが、当時の職員はみんな元気がいいと言うか無謀と言うか、捕獣網を持ってオリ中に入り、網をかぶせて捕まえたのです。必死の思いで押さえ込みなんとか手術も無事終了したので良かったのですが、一歩間違えばとんでもない事故になるところでした。
 クマの後はゾウを25年担当しました。その後、ゾウから子供動物園に担当替えになったときは、緊張の糸が切れたようで少し拍子抜けした感じがした事を覚えています。ゾウの飼育が毎日いかに精神的に集中し、気を張りつめていたかが担当を離れてみてよく分かりました。ゾウで特に印象深いのは、担当が変わった直後に相方の佐野飼育員が結婚して新婚旅行に行くので何日か休暇を取った時のことです。その休暇中に「ゾウと綱引き」というイベントが入っていて、当日は一人で必死にがんばったのですが、どうにかなっちゃうのではと思うくらい緊張した事を覚えています。綱引きをしたのは年上のダンボの方で、何日か前から練習はしていたのですが、号令をかけるのはもちろんリーダーの佐野飼育員だからダンボも違和感無く命令に従っていたのです。
 しかし、当日はリーダー不在の中で全くの新人が命令したのです。ダンボもさぞかし戸惑っていたのではないかと思います。イベントはなんとか無事に終了したのですが、今思うとダンボの方が自分のやるべき事を理解していて、自ら率先して動いてくれたのではないかと思います。担当しているときはいつもダンボやシャンティと張り合っていたつもりでしたが、彼女たちの方が2枚も3枚も上手でした。ゾウの担当にもいろいろな事がありました。子供だったダンボとシャンティー(ダンボ7歳・シャンティ4歳)が成長する過程で、自分も一緒にその時間を過ごせたことは、本当に貴重な経験ができて良かったと思っています。
 今はダンボとシャンティに感謝の気持ちでいっぱいです。彼女たちもこれからだんだん高齢になって行くので、一日でも長生きして市民の皆さんにたくさんの愛を振りまいてほしいと思います。もちろん私自身も歳を取って行くのですが・・・

飼育担当 鈴木 和明

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