でっきぶらし(News Paper)

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195号(2010年08月)2ページ

≪あらかると≫サイとのコミュニケーション

 日本平動物園には現在、二頭のサイがいます。名前を「たろう」と「さい子」といいます。「たろう」は1982年3月27日生まれで2001年1月にやってきました。「さい子」は1981年1月5日生まれ、1984年4月に動物園の開園二十周年記念でやってきました。名前は一般応募より選ばれましたが、今の「たろう」は「さい子」と一緒に来た初代「たろう」が病気で亡くなった後来た二代目です。個体の見分け方ですが、角が短くて太いのがタロウで細長い角がサイコです。今度じっくりと見比べてください。
 朝部屋に入る時は、「おはよう」と声をかけています。サイはあんな大きな体をしていますが、意外と臆病者ですので寝ぼけている時などはびっくりするからです。
 お客さんの中には、僕がサイの体をペチペチたたくところを見たことがあると思いますが、決していじめているのではありません。あれはいい子いい子しているのです。サイの背中の皮膚は厚いので撫でてもサイがわからないと思っているからたたいています。ちなみに僕はサイを触るとき、よくビニール手袋をしています。以前素手で背中を撫でていたら指の指紋が消えてしまったからです。
 背中の皮膚は粗いヤスリの様にとてもざらざらしています。そのかわり頭や顔の辺りと間接部は皮膚が柔らかいので、普通に撫でています。一応ペチペチたたいてもサイにとっては気持ちがいいようです。その証拠に僕が名前を呼んでそばに行けば近寄ってきます。ただ、名前を呼んだからっていつもやってくるわけではありません。サイにとって一番好きなものは餌、次に昼寝。三番目、四番目を過ぎて五番目以降で僕が順番に入ってくるみたいです。だから餌を食べてお腹がいっぱいになって、昼寝をした後にならないと名前を呼んでもやって来ません。
 ちなみに個体別に見ると「たろう」君のほうが甘えん坊です。壁ぴったりに僕のところにやって来ていい子いい子されたがります。「さい子」ちゃんも近くにやっては来るのですが、少し手前で止まるので僕のほうが近づかなければなりません。それでも触りだすと「たろう」君のようにじっとしています。二頭とも背中をペチペチたたいていると少し動いて頭、耳の後ろ、また動いて背中そしてお尻。満足して向こうに行ったかと思うと向きをかえて今度は反対側と、満足するまでしばらく相手をします。このように触られるのが大好きらしいので、どちらかを触っているともう一頭が近くで待っていますし、順番が待ちきれずに鼻を鳴らしての威嚇やケンカをすることもあります。
 しかしお腹がすいてくると触れる時間が短くなり、三時を過ぎるとだんだんイラつき相手にしなくなります。部屋の前をうろうろしたり、イラついてケンカをすることもあります。そうなると大変危険なのでサイから離れて夕飯の準備をします。部屋の中に入り、餌を食べ始めると僕のことは気にしません。掃除が終わり後は部屋の鍵を閉めて仕事終了ですが、帰る前にお腹がいっぱいになり横になっている「たろう」君の顔を撫でて「おやすみ」します。「さい子」チャンはまだ食べているので声をかけるだけです。こうして一日が終わり、次の朝には「おはよう」から始まります。この様に普段からコミュニケーションをとることでお互いの信頼関係を得ています。動物たちは飼育係の服装を覚えているので、いい意味でも悪い意味でも気にしています。今度動物園に行ったら動物たちの視線を気にして見てください。
(土屋 博之)

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