でっきぶらし(News Paper)

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192号(2010年02月)3ページ

アシカとアザラシ気になる関係

今年の春にいよいよオープンする、新猛獣館。ここに展示予定のため、一足先に去年の6月にやってきたのが、ゴマフアザラシのソウヤ(オス)とシズ(メス)です。

北海道から静岡に移り住み、暑い夏を乗り越えられるか心配していましたが、さすがはやんちゃ盛りの子どもたち!おかげさまで元気に8ヶ月を過ごしてきました。もう少しすると、新しい展示場へ引っ越し、3月末に2頭そろって2歳の誕生日を迎える予定です。

この、アザラシたちと並んでプールで暮らしているのが、カリフォルニアアシカのグリアン(オス)です。以前はメスのミディと一緒に毎年のように子どもを育て、その大きな体と大きな声で、動物園でも一、二を争う存在感を示していました。

しかし、施設の老朽化に伴い再整備計画の一環でアシカ池は取り壊されることが決まり、グリアンよりも若いミディは、去年5月新しい繁殖のために名古屋の東山動物園へ引っ越していきました。

長年連れ添ったミディと離れ離れになってしまったグリアン。しばらく寂しそうにしていました。
そんなグリアンを元気づけてくれたのが、隣の小プールにやってきたソウヤとシズでした。

朝、アシカの展示場でグリアンに魚をあげてから、アザラシたちの展示場に入って魚をあげます。最初は調子良く2頭とも食べますが、大体決まって途中で急にそわそわしだすのです。

「アウッ、アウッ、アウッ」グリアンの声が聞こえます。ふと隣のプールに目をやると、アザラシから見れば『黒くて大きい』グリアンが、柵越しに身を乗り出してこちらをじっ〜と見ているのです。

「こっち、こっち!」さっきごはんを食べたのに、飼育係にもうアピール。「グリアン、さっき食べたでしょ〜」と声をかけると、いたずらっ子の顔で「あ、ばれた?」鳴くのをやめて、今度はアザラシたちをじっと眺めています。

「僕も一緒に遊びたいな(ついでにそのお魚も食べてあげるよ)」と思っているようです。毎日隣のかわいい子たちのお食事を見学するのが、自然とグリアンの習慣(楽しみ)になりました。

一方のアザラシはというと、グリアンの大きさに最初は驚いていましたが、それにも慣れた様子。「大きなおじさんがいるな〜」という感じでこちらも興味津々です。

しかし、アザラシは神経質な性格なので、ちょっとしたことに驚くことがよくあります(近くにいるホッキョクグマのロッシーが、おもちゃを投げて遊ぶ時の「ドーン」という音などによく反応して、その方角を気にします)。

グリアンの食事の時には、逆にアザラシがグリアンを盛んに見ています。というのも、グリアンがプールを泳ぎ回って水が揺れるとアザラシ側の小プールにも大きな波が立つからです。

アシカとアザラシに(別々の係が)同時に給餌するときは、グリアンの起こすウェーブが始まると、アザラシたちは自分の食事はそっちのけで波に乗って素早く泳ぎだし、特にシズは勢いよく水中から垂直とび(身体が水中から半分出るレベルです)をしてグリアンの姿をのぞき見ています。やっぱり、お互いに興味があるんですね。

さて、皆さんはアシカとアザラシの違いをご存知ですか?体形がよく似ていて、同じ鰭脚類(「ききゃくるい」もしくは「ひれあしるい」=ヒレの足を持つ動物)の仲間ですが、泳ぎ方など簡単に見分けられるいくつかのポイントがあるんですよ。水中を豪快に泳ぐグリアンが見られる午後3時からのお食事タイムは必見です。

火・水曜日は飼育係によるガイドも行っています。グリアンたちを見ながらアシカやアザラシの生態についても知っていただけたら嬉しいです。期間(春まで)限定のアシカとアザラシのお隣展示を是非見に来てください。

好奇心が旺盛で人懐っこく、愛嬌があって、とても優しい、本当に素敵なアシカのグリアン。そんなグリアンも、近いうちに他の動物園へ行ってしまう予定です。思い出の詰まった施設とアシカがこの動物園からいなくなってしまうのは寂しいかぎりですが、人気者のグリアンに今のうちに会いに来てくださいね。                                  

(松下 愛)

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