でっきぶらし(News Paper)

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167号(2005年09月)6ページ

あの子は今 ・・・?!

自分の担当している動物に子供が生まれると、飼育係はまるで自分の子供かのように愛情を注ぎ、その成長ぶりを観察する毎日がとても楽しいものです。彼らも大人になってくると、数の少なくなったこれらの野生動物を他の動物園や水族館と協力して守り増やしていこうという目的で、お婿さんやお嫁さんとして日本平動物園を巣立って行きます。

 たまに空を見上げては、「その後、あの子は元気にしているのかなあ・・・」と思うのが親心。というわけで、来園された皆さんにかわいがっていただいていた2頭に、当時の飼育担当者が会いに行って来ましたので、彼らの近況をお知らせします。

 まずは、2003年6月に生まれ、母親が育てなかったため人工哺育で育ち「お散歩」で人気を博したアムールトラのシマジロウ(♂)。昨年3月、富士サファリパークにお婿さんとして行きました。お母さん代わりに人工哺育で育てた松永飼育係は、思い入れもひとしお。トラゾーンに行く前から胸が高まって落ち着きがありません。

 シマジロウとの再会は突然でした。トラゾーンに車で入って行くとすぐ、2頭のトラが近くにいました。そのうちの1頭が、あのシマジロウだったのです。草の上に寝そべり、誇り高い雰囲気をかもし出すような立派な顔つきをしていました。当然サファリゾーンなので車の窓も開けられず、「シマ!シマ!」と大声で呼びかける育ての親の視線に気がついたのか、私達の車がトラゾーンの反対側を通った時も、立ち上がって網の近くを歩いて元気な姿を見せてくれました。一緒にいる♀とも仲良くしているようですよ。

 富士サファリパークは、同じ静岡県内でも雪の積もる地域にあります。シマジロウは、初めて見る雪の中でも元気に走りまわって暮らしているとのこと。係の方に聞くと、「シマジロウはどれですか?」と来園者に聞かれることもあるそうです。皆さん、会いに行ってくださっているんですね。ありがとうございます!野生での数が少なくなり、絶滅の危機に瀕しているアムールトラ。シマジロウにも種の保存という重大な使命が期待されます。頼んだよ、シマジロウ!

 さて、もう1つの再会は、2003年7月に生まれた、カリフォルニアアシカのエース(♀)です。お父さんのグリアンの故郷である千葉県の鴨川シーワールドに、お父さんに代わって昨年6月里帰りしました。今年の春、千葉まで会いに行ったのですが、なんと静岡県内の淡島マリンパークに移ったそうで、会えずじまいでした。こんな近くにいるなら是非行かなきゃと思い、伊豆半島まで出掛けていきました。淡島マリンパークには、カリフォルニアアシカの他に、イルカやゴマフアザラシ、フンボルトペンギンなどが暮らしていました。

 エースは、とても元気にしていました!動物園水族館の人気者のエースになってほしいという思いで名付けましたが、水族館の未来を背負う期待の星という意味で「未来(ミク)」という名前をもらったそうです。思いの通じる名前でありがたく思いました。物怖じしない好奇心旺盛な性格で、トレーニングも楽しみながらやっている様子。かわいがっていただいているようで、「とてもいい子ですよ、天才です!」と担当の方のお墨付きでした。生まれた当初は7kgだった体重も37kgになり、成長した体つきでしたが、つぶらな瞳には以前の面影がありました。元気いっぱいで本当に嬉しかったです。

 ちなみに、この近くにある伊豆三津シーパラダイスでは、エースのお兄ちゃんであるワールドが暮らしています。「トリビア」くんという流行の(?)名前になったそうです。伊豆方面にお出かけの際は、2頭に会って来てください。頑張れ、エースとワールド!

 日本平動物園から巣立った子供たちが他の園で頑張っている様子を見て、私たちも動物の健康管理のために彼らに負けずもっと頑張らないと!と思いました。皆さんもお気に入りの動物たちの成長を見に動物園に足を運んで、動物たちからいっぱい元気をもらってくださいね。そうすれば、たくさんの皆さんからの愛情を受けて、動物たちも元気をもらえることでしょう。

(野村 愛)

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