でっきぶらし(News Paper)

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164号(2005年03月)8ページ

動物園実習だより 学芸員実習を終えて2

静岡大学教育学部 天野大輔

今回、実習をさせていただいて、今までとは違う視点で動物園を見ることができました。お客さんとして園内を見たときには、気付かなかったことがあります。それは、園内の掲示物・表示物が手づくり感に溢れたものが非常に多いということです。普通、そういったものは外注して業者が制作してくるものだと思っていたが、動物園のスタッフの創意と工夫によって作られているものであるということに驚かされました。

そうやって、園内を見ていくと、その労力というものも、並々ならぬものがあるということがわかりました。しかし、生き物を扱っている以上は、内容が新しく更新されることは常に起こりうることであるし、ホットな話題を来園者に伝えて楽しんでもらうためにも、欠かせない作業と言えます。そのうえ、動物園という所が、屋外型の施設であることを考えると劣化することは不可避で、いつも万全の体制にしておくには、大変な努力を要するように思えました。

また、表示物が単なる動物の紹介だけではなく、その他のたくさんの話題を来園者に提供しているということにも気付かされました。クマが人里に下りて来る理由を説明したものや、昆虫の紹介などは、直接的に動物園の動物を説明するものではないですが、非常に教育的な意味合いというものを持ったものであると思います。まさに動物園という場所は、単なる動物を見せる場ではなく、社会教育の場として機能していくべきところなのだということを実感しました。

今回は、主にこういった園内の表示物の制作に携わらせていただき、人に「見せる」ということはどういうことなのかを学ばせていただいたように思います。私が一番時間をかけて制作したのはゾウのパネルでしたが、その完成までには実働で10〜20時間はかかったように思われます。来園者がこれを見るのは数十秒でしょうが、制作サイドではこれだけの作業が必要となります。文字の配列や大きさひとつとっても、どのようにすればわかりやすく、見えやすいか、そして読んでもらうにはどうしたらよいかということを真剣に考えなければなりません。

普段さして気にも止めないこういった表示物ですが、その裏でのスタッフの苦労というものを、身をもって実感するばかりでした。私は色彩関係の資格を一応有していますが、実際に配色を考えて制作するのには、あまり役に立ちませんでした。実際に制作して、来園者に見てもらい反応を見るという経験が一番ものを言うでしょう。そういった意味では、動物園のスタッフの方が、理論だけ学んでいる私よりはよっぽど実践力を持っているように思えました。

そういった、動物園をいかにお客さんに見せるかということだけでなく、その他の仕事も見学させていただいて、いろいろと身になりました。特に、ボランティアの方々を育てて、そしてスタッフとしてガイドをしてもらうという手法は、動物園として人手を確保するということに留まらず、まさに生涯学習としての機能そのものであるよう思います。

ガイドの中にプロジェクトワイルドのアクティビティを取り込もうと考えていたりして、学芸員として様々な工夫をしていられる姿に感心しました。私が今回体験したのは楽しい部分ばかりで、実際には事務的な大変な部分もたくさんあるのでしょうが、楽しく勉強させていただいて、この仕事がやりがいのある面白い仕事なのだというふうに感じています。

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