でっきぶらし(News Paper)

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160号(2004年07月)4ページ

ダイアナモンキーの「バアチャン」天寿全う

9月4日、ダイアナモンキーの「バアチャン」が永眠しました。
 彼女は1969年の開園以来日本平動物園に住んでいました。来園したときはすでに成獣で推定2〜3歳、今年で35周年なので推定37〜38歳になります。
 このタイプのサル、俗に大きくわけて中型サルと区分けされているサルとしては、この37〜38歳という年齢は途方もない数字で、人間のそれに換算するとおよそ100歳以上です。いくつかの計算式があるため、それぞれの式で差が出ることを考慮しても、平均して120〜130歳に近い換算が可能です。
 はっきり言って、普通ダイアナモンキーはこんなに生きません。そのため、彼女のこの長寿は異例中の異例で、間違いなく日本一、未確認ですがおそらく世界一かそのあたりの記録に迫るでしょう。
 そんな長寿記録、人間ならば前人未踏と表現されるので、仮に前猿未踏とでも言うべき記録を遺した彼女は、実はずいぶん前から、比較的若い頃から「バアチャン」という名前だったのです。
 歴代担当者の記憶が定かではないので性格な時期はわかりませんが、多分20年くらい前から「バアチャン」であり、人間で言えば中年期からそう呼ばれていたことになります。非常に失礼な話ですが、彼女は「バアチャン」と呼ばれるようになる前は・・・実は名前がありませんでした!実はこうした事は昔はよくあった事で、いくつかの動物では現在でも名前がなく、単に個体番号で呼ばれている動物もいます。
 とは言え、中型のサル、しかもよく動いて自己主張もしっかりしていたのに(?)、彼女の生涯の前半は名なし、後半は「バアチャン」。何と言う女の一生でしょう。
 他の個体と比較すると、担当者を含めた人間全体をおそらく好きでも嫌いでもなかった、多分人間などどうでもよかった、超マイペースだった「バアチャン」。ダイアナモンキーとしては、いわゆる仕切り屋で、女ボスでした。誰よりも多く餌を食べることに執着を燃やし(まあ、たいていのサルは皆そうですが)、ちょっとでも他の個体が自分より多く餌をもらったと判断すると、大声でギャアギャア鳴いて抗議した「バアチャン」。
 腰が曲がり、歯は残り少なくなり、動きは鈍くなっても、餌に関しては並々ならぬエネルギーを持っていました。もしかしたら、彼女なりの長寿の秘訣はそこにあったのかも知れません。
 「バアチャン」、長い間、本当にご苦労様でした。  (長谷川 裕)

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