でっきぶらし(News Paper)

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155号(2003年09月)7ページ

病院だより アムールトラの胃の中は・・・

 今回の主役は、「あらかると」でも登場したアムールトラ。シマジロウのお父さんのトシ(7歳)です。ライオンと並び迫力の中に優雅ささえ感じさせるその出で立ちとは裏腹に、トシには以前から抱えているまさしく「胃が痛くなる」ような悩みがあったのです。

 トシが以 前調子を崩したときのこと。
 もちろん「じっとし ててねー」と麻酔をかけないで診察や治療をすることは無理ですから、麻酔をかけて腹部の超音波検査を行いました。なにやらそこには黒い影が・・・。

 どうやら胃の中に異物らしき像が観察されました。胃薬をしばらくあげていましたが、たまに吐いたり、便の中に消化されきっていない肉片が残ったり、と具合は良くなったり悪くなったり。そしてある時、吐いた物の中に判別のつかない小さな異物が出てきました。しかし、それで良くなりはせず、最近はまた調子の良くない日々が続いていました。

 皆さんの中には、だったらお腹を開けて胃の中身を取り出せばいいのでは、と思う方もいるかもしれませんね。しかし、ネコの仲間のトラでは、お腹を開いて手術をしたとしても、目が覚めたあとに術部をペロペロとなめてガジガジとやってしまえば、縫ったところもパックリです。そこで、医療メーカーの方に協力していただき、内視鏡(胃カメラ)で胃の中をのぞいて見ることにしました。皆さんは胃カメラを飲んだ(飲むっていうんですよね)ことがありますか?私はありませんが、飲むのはさぞかし辛いらしく、人でも麻酔をかけてじゃないと無理な人もいるそうです。吹き矢で麻酔をかけてから、病院にシマウマ(の模様の車ですが)でトシを運び、大きな口を開いて内視鏡を挿入。見えてきた胃壁を見ると、想像していたような胃炎や潰瘍はなく、異物も見あたりませんでしたが、胃液を採取して調べると、むむ、おかしい・・・。

そこで、胃液の状態を整える薬を飲ませて、今はだいぶ調子が良くなってきました。皆さんは胃が痛くなりそうになったら、動物園に癒されに来てくださいね。
(野村 愛)

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