でっきぶらし(News Paper)

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35号(1983年09月)2ページ

サマースクール 〜 飼育 〜

「お父さん、明日のお休み動物園に連れてってよ。」「○○ちゃん、お父さんは疲れているんだから、そんな無理ばかり言ってはだめよ。」「だってaAいきたいんだものぉー。」「いいよ、いいよ、連れてってやるよ。」「わーい、やった、やったあ。」 子供の喜ぶ顔を見ると仕事の疲れも忘れ、ついその気になって・・・。
土曜日の夕刻に見られる平凡な家庭風景ではないでしょうか。

かくて、日曜日は動物園へ、そして、人、人、人。ゴリラ、チンパンジーの仕草が面白いと言っては笑い、キリンの首の長さに改めて驚いたり、ライオン、トラが寝てばかりで残念そうにしたりして、めいめいの思いで動物を見て楽しむのでしょう。昼近くなると、木陰を探してひと休み、そしてお母さんの手作りおむすびをほおばって、またひとしきりわいわいがやがや。
動物に飽きると遊具に乗ったり、まだまだ体力が余っていれば、アスレチックのほうまで足を伸ばしたりたりして、それぞれ、動物園での1日を楽しんで過ごすのだと思います。
5月、有料入園者数が遂に700万人を越えました。地方の、比較的人口のさほど多くない都市で、14年経過したとは言えよくぞこれだけ入ったものと、改めて驚かされます。
市民に愛されて、親しまれて、ここまで来られたのは素晴らしいことです。が、それだけで甘んじていていいのでしょうか。それは、リクレエーションと言う一面からだけの、活躍にしか過ぎません。
動物園は、4つの目的を持って運営されています。ひとつは前述のリクレエーション、それに社会教育、研究、自然保護の3つが加わります。が、後の3つは一般にあまり理解されていないと言うか、今ひとつ活動が弱く、すそ野の広がりを見せていないのが現実のようです。
私たちがZOOしずおかや、でっきぶらしを発行するのに、あるいは、ムジナ会のような勉強会を続けるのに、ひたむきな努力を続けるのは、社会教育や研究と言う目的を意識しての、自らの研摩、大衆へのアピールに他なりません。動物園を単に娯楽の場と考えてもらわない為です。
動物園において細々、地道に続けられている教育活動に、サマースクールや動物教室があります。特にサマースクールは、夏の一時期ながら、現在ではたいていの動物園で行われるようになっています。もちろん、日本平動物園においても、開園当初は1日飼育教室として秋に実施され、その後は7月下旬から8月上旬にかけて、恒例の行事として実施されています。
恒例化しているといっても、夏のわずかな一時期の行事。この程度で社会教育をやっているとうぬぼれたなら、大変な間違いです。対象の児童もそんなに多くありません。よりよい方向へ持ってゆく為に、これからもいっそうの努力が求められるでしょう。
前置きが長くなりました。それでは、サマースクールがどのように実施されているのか、私たち飼育係がどのように関っているのか今年行われたサマースクールを通じて説明してゆきたいと思います。

まずは、1班3人いる中からひとり、誰が今年の当番になるかから始まります。「去年俺がやったから、今年はお前やれよ。」「今年はちょっと都合悪いで、来年やるから頼むよ。」と、まあこんな具合にです。通常の仕事、動物の世話をしながら参加しなければならない訳ですから、時と場合によって、大事な行事と承知していても、ついためらいがちになってしまうこともあります。
各班からそれぞれ代表が出て、対象の児童、小学校1年生、2〜3年生、4・5・6年生のいずれを担当するかまず話し合い。担当が決まったところで、主題決めです。まあ昨年と同じ事をやれば、一番楽でいい訳ですが、誰しもそれはプライドが許しません。同じやるなら、自分たちなりにひと工夫したものをやりたいものです。どうやって退屈させないで楽しく、動物園や動物に馴じませる事ができるかを考えて、それぞれのテキストが作成されます。
1年生の主題は、動物と仲よしになろうです。ちょっとテキストに眼を向けて見ましょう。

9:30 しゅうごう
9:40〜10:00 えんちょうさんのおはなし
         やくそくをしよう
10:00〜12:00 どうぶつをみて べんきょうしよう
12:00〜13:00 おべんとうをたべよう
13:00〜14:45 どうぶつとなかよしになろう
(1)ポニーにのろう (2)えさをあげよう (3)ウサギをだこう
(4)どうぶつのなきごえクイズ (5)ヘビとみずあそび
14:45〜15:00 きねんさつえい
15:00〜15:15 おわりのはなし/しゅうりょうしょうしょ/きねんひん

◎どうぶつとなかよしになろう
1)さわってみたどうぶつのなまえをかいてみよう
2)どうぶつのなきごえクイズ
どのどうぶつのなきごえかわかったらなまえをかいてみよう
3)ヘビさんとみずあそびのかんそうをかこう
どんなかっこうでおよいだかな
さわったかんじはどうだったかな

午前中、園内見学した後にポニーにのったり、ウサギを抱いたり、ヤギにエサを与えたり、フィナーレはインドニシキヘビと水遊び。動物に馴れ親しんで貰うことが、大きな目的です。子供たちは、どんな思いでどんな事をテキストに書いたでしょう。新鮮な喜びを感じていてくれれば幸いです。

2〜3年生は、食べものとうんこの話。原因(食べもの)だけでなく、結果(うんこ)も知ってもらおうと、ちょっとユニークな?主題となりました。臭いうんこを見せようとは、いかにも飼育係らしい発想です。
このクラスは私も担当のひとりとして加わったことでもあり、その感想を少し述べてみたいと思います。
まずは、調理室の前にテーブル3台を並べ、私たちがだいたいバランスを考えて選んだ動物9種類の餌をそこに置きました。動物の名前を読みあげて、それをテキストに記入させるようにした訳です。
次は動物とうんこを睨めっこする為に園内見学。2〜3年生では、まだ偏見に固まることもなく、けっこう好奇心も示して、あらかじめ用意して容器の中に入れてあった糞をしげしげと眺めるだけでなく、中にはさわろうとした子さえいました。ものがものだけにもっと汚がるのではと思っていましたが、意外な反応でした。
午後は、クイズ形式で復習です。テキストを伏せて、各々の動物の食べ物とうんこをもう一度思い出させるようにしました。午前中によく話を聞き、真面目に見ていれば簡単にできる訳ですが・・・。
いや集中させるのには、大変なことです。すぐにわいわいがやがや、何度も脱線しかけました。それと食べ物よりうんこのほうが正解率の高いこと。ただテキストに書き込んだ動物の食べ物より、動物を前にしげしげと眺めたうんこのほうが、はるかに強烈な印象を受けたようでした。
肉食、雑食、草食獣、11種類のうんこの写真を、少しはとまどうようにして見せたのですが、素晴らしい記憶力でした。

<よてい表>
9:30 しゅうごう
9:40〜10:00 開校式
(1)開校のあいさつ (2)ちゅうい
10:00〜12:00 園内の動物をみながらべんきょうしよう
12:00〜13:00 おべんとうのじかん
13:00〜14:40 さてこの動物はどんなものを食べるかな?
どんなうんこをしていたかな?
14:40〜15:00 きねんさつえい
15:00〜15:30 閉会式
(1)修了証と記念品 (2)閉校のあいさつ
15:30 解散

<テキスト>
私たちのまわりには、いろいろな動物がいます。きょうは園内をまわりながら、動物がどんなものを食べているか、どんなうんこをするのか、かんさつしましょう。そして自分のテキストに書いてみましょう。
◎ゴリラ(本当はマンガチックなイラスト。以下9種類全て同様。)
たべもの
うんこ(見た感じの印象を書く)
◎トラ
たべもの
うんこ
◎アメリカバイソン
たべもの
うんこ
◎マサイキリン
たべもの
うんこ
◎インドゾウ
たべもの
うんこ
◎アキシスジカ
たべもの
うんこ
◎ワラビー(オグロ・パルマ兼用)
たべもの
うんこ
◎インドオオコウモリ
たべもの
うんこ
◎インドニシキヘビ
たべもの
うんこ
◎ニホンツキノワグマ
たべもの
うんこ

少しばかりひょうきんな主題だったかもしれません。でも動物と親しませる方法として、ありきたりにならなかったことは、よかったのではないかと思います。

4・5・6年生は、サマースクールでも主役的地位。2日に渡って行われるのは、このクラスだけです。
まず、初日の主題は動物のチャンピオン。15問設定された訳ですが、私たちが考え込む項目もいくつかありました、ある程度動物好きが集まるとしても、せいぜい4〜5問から7〜8問ぐらいが関の山ではと思っていましたが、実習日に子供たちに聞いた範囲内では、7〜8問と半数ぐらいの正解が一番多いようで、中には、10問以上できた子もまずまずいたようでした。さすがにサマースクールに参加しようと意気込む子供たち、予想以上の正解率でした。

<予定表>
1日目
9:30 開校式
(1)あいさつ (2)注意
10:00 勉強会 (動物のチャンピオン)
12:00 昼食
13:00 集合/園内見学
15:00 2日目の注意事項と説明
15:20 飼育実習のクジ引き/解散
2日目
9:20 集合
9:30 飼育実習の注意/担当者の紹介
10:00 飼育実習
12:00 昼食
13:00 飼育実習
15:00 記念さつえい
15:20 閉会式
(1)修了証と記念品 (2)あいさつ

<テキスト>
◎チャンピオンテスト
1、世界で一番大きな動物はなんですか?

2、陸上で一番大きな動物はなんですか?

3、世界で一番せの高い動物はなんですか?

4、世界で一番大きな鳥はなんですか?

5、世界で一番大きなサルはなんですか?

6、世界で一番大きなハ虫類はなんですか?

7、世界で一番小さい哺乳類はなんですか?

8、世界で一番小さい鳥はなんですか?

9、世界で一番なが生きの哺乳類はなんですか?

10、世界で一番なが生きの鳥はなんですか?

11、世界で一番はやく走る動物はなんですか?

12、世界で一番はやく飛ぶ鳥はなんですか?

13、世界で一番はやく泳ぐ動物(哺乳類)はなんですか?

14、世界で一番はやく泳ぐ鳥はなんですか?

15、世界で一番なが生きの動物はなんですか?


皆さんもいかが、何問できるか挑戦してみませんか。
サマースクールの人気の的は、何と言っても飼育実習です。お客様で来る時と違って、動物舎の裏側を見ることができ、またいろんな動物と身近に接することができるとあっては、期待が高まるのも無理からぬ話でしょう。
反面、私たち飼育係にとっては、もう扱いに慣れているとは言えやはり一番気を遣わせられる時です。一歩唐ン越えれば“危険地帯”は各動物舎にあり、どんなにおとなしい動物でも時と場合によってはやはり危険が生じます。そう言いながら今まで包丁で指を少し切ったような事故以外なかったのは、学ぼうとする姿勢が真剣で、接する態度がよかったからだと思います。
でっきぶらしでごしごし一生懸命掃除したり、ホースを思うように扱えないで、長ぐつの中に水が入ってしまったり、餌を分ける時にニワトリのアタマをつかめと言われ、ちょっとたじろいでみたり、各人様々なところで小さな新しい体験。そこから少しでも動物に親しみを覚え、ほのぼのと暖かい思い出となったのなら、何も言う事はありません。汗をふきふき頑張ったかいがあります。更に将来、何が何でも飼育係になりたい、動物と共に一生を過ごしたい、そんな憧れを誰かに生ませていたとするなら、何も言うことはありません。これ以上の啓発はないでしょう。
動物園がある限り続くでしょう、サマースクール。良くするも悪くするも、楽しくさせるもつまらなくさせるも、私たち飼育係です。これからもたゆまず励んでゆきたいと思います。
(松下憲行)

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