でっきぶらし(News Paper)

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150号(2002年11月)8ページ

動物園実習を振り返って  須部明香

9月2日から2週間の間、動物病院にて実習生としてお世話になってから早数週間が過ぎようとしています。タヌキの威嚇と放尿の洗礼を受けることから始まった実習は毎日とても新鮮で、私の頭の中には日々の出来事が今もなお深く焼きついています。

 午前中の掃除とえさ作りは毎日の決まった主な仕事でした。最初は堀田さんや石垣さんに1から教えていただいたことを、これで本当にいいのかとビクビクしながらの作業でした。しかし、毎日このような仕事を繰り返しているうちに、最初に受けた諸注意の意味も理解できるようになり、それぞれの動物の様子を観察する余裕も生まれてきます。最初は皆さんの洗練されたホース捌きに驚くばかりだった掃除もどのようにしたらできるだけ動物を怒らせないで効率よく済ませることができるのかわかってきて、それぞれの子のえさの好みも少しずつ見えてくるようになりました。このような当たり前の毎日の仕事が健康な個体はもちろん、保護されてきたばかりの弱った動物の飼育に臨機応変に生かされていたことがとても印象的でした。

 ミーティングが終わると、日によっては、海野さんや八木さんの午後の診療にお供させて頂いたり、またある日は生化学的な検査を体験させていただいたり、細菌検査のやり方を教えていただいたりと初めての体験の連続でした。動物園の獣医さんならではの様々なアイディアを生かした治療器具や治療法にはその柔軟性にとても感心しました。専門らしい基本的な技術の習得がまだできていない私に、海野さんと八木さんには忙しい中でひとつひとつ丁寧指導していただき、本来ならば学校での授業や実習で習得すべき知識も含めていろいろなことを教えていただきました。新学期がスタートして新しく微生物学実習が始まった今、つまらないという批判の声の多い中で、病院で教わったことを思い出しながらその意味を再認識しつつ学校での実習も楽しく興味を持ってこなしています。

 こんな初めてづくしの毎日のなかでもうひとつとても印象に残っていることは午後の仕事の合い間を縫って行われる、アクティビティーです。動物用のケージや運動場の組み立てをしたり、池にえさ用の魚を釣りに出掛けたり、ダチョウのたまごの中身を吸い出したりと動物に間接的に関わる作業が動物園らしくもあるのですが、実習という言葉から想像する作業とのギャップも含めてとてもおもしろかったです。

 今回の実習を振り返って、このような機会にしかできないであろう動物園ならではの体験は私にとって予想以上に刺激的かつ貴重な経験となりました。また、それにも増して私のような未熟な学生を温かく迎え、接していただいた飼育課のみなさまには心より感謝しています。(それから課外での実習が初めてである私よりもずっと実習生慣れしていたであろうと思われる各動物さんたちにも・・・。)晴れた日の午後、園内でみかける飼育課やその他スタッフのみなさんの、動物と直接触れ合うところ以外での作業姿は、今まで外からではわからなかった日本平動物園のアットホームな雰囲気の象窒ナあった気がします。これからもこのような温かで来園者とのつながりを大切にする動物園を守り続けていってください。ありがとうございました。

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