でっきぶらし(News Paper)

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105号(1995年05月)7ページ

出産ふ化 それぞれの事情 「カンムリシロムク」

(多くの種と同居する中で)
 熱帯鳥類館内のジャングル展示室は、色とりどりの鳥類が実に華やかに飛び交っています。悪い雰囲気ではありません。が、ただ彼らの繁殖を考えると、よい環境であるとは言いかねます。
 実際に過去に幾つかの種類が、抱卵、ふ化までには至っているのですが、無事に巣立ってはいないのです。他の種類が巣の卵を持ち去ったり、時にはせっかくかえったヒナにさえも同様のことをしていました。
 今年から新たに飼育されたカンムリシロムク、この鳥はなかなか気の強い鳥です。体も丈夫です。とはいえ、予想以上の早さで新たな環境への適応、しかも早速の抱卵にはいささかの驚きを覚えました。
 無事ふ化した朗報にも感心しつつ、内心は途中で他の鳥にやられてしまうのではないかとの気持ちが絶えず横切りました。カンムリシロムク、いかに強者といえど巣を荒らす敵は多勢です。
 ここで強調せねばならないのは、担当者の創意工夫と思いやりでしょう。育雛に欠かせないコオロギが少しずつ出てきて間断なく与えられる容器を作ってみたり、とにかく育雛に最もよい条件づくりに努めました。
 結果、初めての巣立ちです。巣立ったヒナがまだ親にコオロギをおねだりする様子を御覧になったお客様は多いはずです。人好きの担当者のサービスですが、親鳥の、特に父親の面倒見のよさが、そのような状況を作ってくれているようです。
 朗報は、まだ続きます。精力旺盛なペアが早くも二度目の抱卵に入っている、というのです。この分では、来年あたりにはジャングル展示室の一大勢力になっているかもしれません。
 新たな問題になる要素がなきにしもあらずですが、今は素直に繁殖を喜ぶべき時です。

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