でっきぶらし(News Paper)

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120号(1997年11月)9ページ

あらかると 「オランウータン 別居を試みて」

 オランウータンの夫婦は、ただいま月に数日の同居を除き別居中です。と言っても、人間社会の別居とは少し理由が違います。
 この夫婦、第1子誕生までは順調に夫婦らしい歩みでした。が、その後現在に至るまでの数年、ジュン(オス)の、ベリー(メス)に対する淡白さはあまりに歯がゆく、ベリーは満たされぬ思いを私に示すようになり、それは可哀相なくらいでした。
 この夫婦のマンネリ解消のために始めたのが、しばし別居の試みです。自然界では、彼らは発情期を除くとほとんど単独生活をしています。それをちょっと参考にしてみたのです。
 幸いにも、月経、排卵の性周期はほぼ確実に捉えられています。特に発情のピーク、排卵日のその日になると、ベリーの私に対する態度は一変するので、その日を目指して同居させるのはそんなにむずかしいことではありません。
 毎日の生活を見ていると、ベリーはジュンがいなくても大丈夫そうです。が、ジュンのほうは別居に耐えられるか心配でした。
 というのも、ジュンはベリーがいつまでも室内にいると、ベリーを連れに戻り手を引くか、背中を押すかして放飼場に出していたからです。でも、いざ試みると意外にあっさりしていて、思いのほか静かなスタートとなりました。
 そして、その日がやってきました。ベリーが例のあの態度を私に見せ始めたのです。 
 意気込み、胸をワクワクさせて同居させましたが、1日目はお互いにあっち向いてホイ状態です。しかし、今までの経過を見ていると翌日の方が更にピークは高まっています。
 その通り、私に対しては間違いなく示しました。ところが、ジュンに対しては昨日と全く同じ対応で、がっかりです。後は自分で自分を慰める言葉しか出てきません。この数年間のマンネリ生活がたった1回の別居生活で解消されるはずがない、と。
 子は天からの授かりものです。ジュンは、頑張れなんて余計なおせっかい、余分なプレッシャーなんてごめんだよ、と思っているのかもしれません。
(池ヶ谷正志)

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