でっきぶらし(News Paper)

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32号(1983年04月)4ページ

ゴリラの病気と怪我 (その1) 〜中耳炎〜

(小野田祐典)
開園10周年記念の行事として、ゴリラを飼育展示する事になり、昭和54年3月末日にゴリラ舎が完成しました。しかしかんじんのゴリラは、5月12日にオスだけが来園し、メスはいつ来園するかわからない状態でした。来園したオスゴリラは、1頭だけなのに毎日元気よく遊んでおり、名前もゴロンと呼ぶ事にしました。
8月1日の華やかな10周年記念行事も無事終わり、夕方いつものとおり入室させる前に身体検査をしていると、右耳より膿汁が出ているのを発見しました。痛かったのか、指でさわったらしく右耳の周辺が汚れている。さっそく獣医に連絡し、治療しようとしたが、どのようにして治療してよいものか考え込んでしまいました。5月12日に14.5kgで来園したゴロンも、8月1日には19.5kgに成長しており、いくら子供のゴリラだと言っても、力も強く、獣医に治療させようとしないのです。
しかたがないので、代番者である松下飼育課員を応援に呼び、2人で押さえる事にしました。ゴロンを寝室に入れ、2人で入室するとゴロンは、いつもと様子がちがうのを感じたのか、不安そうな表情をしています。つかまえようとしても、いやがり必死に抵抗し、つかむ所もないので、なかなかうまく押さえることができません。それでも、どうにか2人で押さえている間に、すばやく治療してもらいましたが、3日目には私たちを咬んだりして、どうしても押さえる事ができなくなってしまいました。獣医が治療できなくなったからといって放っておいたら悪化し、とりかえしのつかない事になってしまうので、私が治療する事にしました。
私が足をのばして座わり、ゴロンを呼ぶと、私の足をひざ枕にし寝ころがってきました。綿棒でそっと耳をさわってもおとなしくしているので、これなら大丈夫と思い、薬のついた綿棒を右耳の穴の中に入れて治療しましたが、中が見えないので、どこが悪い所かわからず苦労しました。この日は、おとなしく治療させてくれましたが、最初の3日間、押さえつけて治療した為に、気が荒くなり昼間私と遊んでいる時でも咬んだりして、反抗的になってきました。綿棒を持って入室すると、逃げ回り、なかなか治療させてくれません。しかたなく叱るとしぶしぶ寄ってきて台の上に寝ころがるが、薬をつけようとすると手でじゃまをしてはいやがります。それでも、毎日治療を続けたので観念したのか、10日目ごろからおとなしく治療をさせてくれるようになりました。薬つけは、1日1回ですが、膿汁が出ていたり、湿っている時には、1日3〜4回綿棒でふき、3週間位で薬つけは中止しました。その後も湿っていたりするので、ふくと黄色く付いたりし、完治するまでには1ヶ月半もかかってしまいました。
この中耳炎が、ゴロンにとって来園して初めての病気でした。どうして中耳炎になったのか不明ですが、大事にいたらなくて本当によかったと思っています。

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