でっきぶらし(News Paper)

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286号(2026年06月)5ページ

待望のお婿さん

「スローロリス」という動物をご存知でしょうか?「スローロ・リス」ではなく「スロー・ロリス」です。名前からリスだと思われがちですが、ロリスという我々と同じ霊長目、原始的なサルの仲間になります。ちなみにリスはげっ歯目、ネズミの仲間ですね。夜行性動物館ではムササビがリスの仲間に属します。

日本平動物園ではメスのスローロリス(スンダスローロリス)を2頭飼育しており、名前はそれぞれ「カズヤ」「ヒロ子」といいます。現在カズヤは療養中で展示をしておりませんが、ヒロ子には夜行性動物館で会うことができます。彼女たちはともにワシントン条約違反の摘発、保護された個体です。スンダスローロリスはIUCNレッドリストでEN(絶滅危惧種)に分類されます。このレベルは近い将来に野生で絶滅する可能性が高い種を指し、レッサーパンダやアジアゾウもENに分類されています。絶滅危惧の要因は様々ありますが、ロリスの場合はエキゾチックペットとして売る目的での乱獲、密猟、密輸も絶滅に追いやる大きな要因となっています。日本でも最近エキゾチックカフェやロリスを飼育している一般の方が増えてきましたね。決して遠い世界の話ではないのです。

話が逸れましたが、国内の動物園では絶滅危惧種の飼育下個体群を未来につないでいくため、各個体の血統を把握、管理し計画的に繁殖を行っています。この計画上、他のどの個体とも血縁のない野生由来の彼女たちはぜひとも繁殖してほしい期待の星なのです。

さてその期待の星に恩賜上野動物園より待望のお婿さんが来園しました。彼は上野動物園では個体名がなく、便宜的に「三男(さんなん)」と呼ばれていたそうです。1頭だけ名前が無いのもさみしく、漢字をそのままに「三男(みつお)」と名付けたいところでしたが、当園にはすでにシロガオサキの「ミツオ」がいるため断念。飼育担当が三男っぽい名前として「サブロー」と命名しました。

サブローの第一印象は小さくてスリム!(ヒロ子が骨格的にも大柄でさらにムチムチビッグボディなだけでサブローが標準サイズです)しかも俊敏!(カズヤが高齢でヒロ子よりもさらにゆっくりなだけでスローロリス基準ではサブローが普通です)彼は来園当日からご飯をよく食べ、人懐っこい性格なのが見て取れました。そして餌皿も水皿も皿という皿をすべてひっくり返すやんちゃ坊主でもありました…。

一週間の検疫ののち、夜行性動物館へ移動。ヒロ子の部屋内でサブローは大きめの鳥かごに入れてお見合いを始めました。最初からサブローはヒロ子に興味津々。一方ヒロ子は「なんかあるぞ?」といった感じで遠巻きに見ていましたが、数時間後にはサブローの鳥かごの上に乗っていました。お互いに全く興味を示さなかったらどうしようかと思っていましたが、なかなか上々の滑り出しです。

一週間後、初めての同居。ヒロ子との体格差が気になるところでしたが、サブローはヒロ子より新しいお部屋に興味があるようで、部屋中を歩き回ります。一方ヒロ子はお気に入りの巣箱にこもり、サブローが近づくとうなり声を出して追い払っていました。初めての同居は半日ほどでとくに大きなトラブルもなく終了しました。

さらに一週間後2回目の同居。今回は朝から丸一日の予定でスタートしました。開始当初は最初の同居と変わらない雰囲気でしたが、飼育担当が餌を作っている間になんらかの心境の変化があったのか、2頭ピッタリくっついて餌を待っているではありませんか。そして1枚のお皿から仲良く餌を食べているではありませんか!さらに食後はお互いに毛づくろいをしたり、取っ組み合いをして遊んだりする様子も確認できました。なので別居させる予定でしたが、そのまま同居を続けることにしました。以後、しつこくしすぎたサブローが腕をヒロ子に嚙まれたり(かすり傷でしたが)など小競り合いはあったものの、仲良くやっております。最近はサブローがヒロ子お気に入りの巣箱に(無理やり)入っても怒られなくなったのか、開園前と閉園後はよく同じ巣箱にミチミチに入って一緒に寝ています。サブローははみ出しているけどそこがいいみたいです。他にも巣箱はあるのに。

しかしながら2頭の仲は見ている感じ、繁殖しそうな雰囲気というよりサブローがヒロ子に甘えているような…?親子じゃないのにオスが母親に甘えるようにメスに甘えているこの感じ、オランウータン副担当時代に見ていたミンピー(メス)と故ジュリー(オス)に似ている…?この2頭は結局繁殖できなかったのですが…。

一抹の不安を抱えつつ、繁殖を期待して2頭を今後も見守っていこうかと思います。頼むぞ。サブロー!

(増田)

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