286号(2026年06月)4ページ
クマが街中に現れるのはなぜ?
今年の3月に日本平動物園で「しずおか生き物ガイド」というイベントが開催されました。動物園で見られる飼育動物ではなく、私たちの地元、静岡に生息している野生動物にスポットを当てた新企画です。記念すべき第1回は、昨今度々ニュースに取り上げられるクマがテーマでした。
クマの大量出没と言われていますが、どうしてクマがこれほどまでにたくさん目撃され、時には人間に危害を及ぼすようになったと思いますか?それは気候の変化に伴う餌不足や、緩衝地帯である里山の減少など様々な要因があります。中でもよく言われる2つの要因について今回はお話しようかと思います。
要因1つ目「クマの数が増えているから」
クマの数自体が増えている可能性は十分にあります。クマの場合、個体数を正確に割り出すのは難しいと言われています。ちなみにシカなどは計算式があって、個体数を推定するのはそんなに難しくないようです。
ニュースを見ていると全国各地でクマが出没しているように思えるかもしれませんが、実はクマの出没地域には偏りがあります。日本に生息するクマは本州から南に分布するツキノワグマと北海道に生息するヒグマの2種類です。ツキノワグマは東北を中心に出没が報告され、西へ行けば行くほど個体数は縮小傾向にあり、四国では滅多に出会うことのない絶滅危惧種、九州では既に絶滅したと考えられています。ちなみに静岡県内には約540頭のツキノワグマが生息していると推定されています。
要因2つ目「クマの棲む森で餌が少なくなって、餌を求めて人里に降りてくるようになったから」
クマは冬眠前の秋にたくさん餌を食べて太らなくちゃいけません。秋はブナ、ミズナラといった堅い木の実がクマの主要な餌資源になりますが、これらは豊作の年もあれば、全然実をつけない大凶作の年もあります(ブナ・ミズナラはクマに実を食べ尽くされないように、自ら豊作と凶作の年を作り出して、クマの数をコントロールしているという説もあります)。ここのところ凶作の年が続き、クマたちは餌を求めて山を下り、人が生活する住宅地まで現れるようになったと考えられています。私たち人が住む場所には美味しいものがたくさん溢れています。庭になっている柿の実を木に登って食べたり、ごみ箱を漁って人間の食べ残しを狙うクマもいます。中にはスーパーに現れたクマもいました。こうして人の生活圏で行動するようになったクマは「森で餌を探すよりも、人間たちの近くにいた方が美味しい餌を簡単に手に入れられるぞ」と考えるようになったのかもしれません。
クマは1年以上かけて子どもをゆっくり大事に育てます。クマの子どもたちはこの間に母親からたくさんのことを学びます。もちろん餌の取り方も学びます。人を恐れなくなったクマの習性はこうして次の世代に引き継がれる可能性があります。クマによる痛ましい事故も報道されますが、事故を防ぐためには、私たち人も生活のあり方を見直す必要があるのかもしれませんね。
(山本)



