283号(2025年09月)5ページ
「ミンピーの食道楽」

ボルネオオランウータンのミンピーは、大変ありがたいことに多くのファンに愛され、今年もたくさんの頂き物を頂戴しております。毛布やタライなどの日用品や、旬のお野菜などバラエティ豊かな頂き物ですが、中でもフルーツを多く頂きます。巨峰やマンゴー、メロン、キウイ、スイカ、イチゴなど、多種多様かつゴージャスです。それに比べて私のお昼ご飯は30%引きの売れ残りおにぎり3つ…なーんて、ぼやいてみる私を横目に、美味しそうにマンゴーを頬張るミンピーさんです。美味しい時は何度も吐き戻して食べ直すのですぐわかります。ちなみにネギを食べた日の吐き戻しは、ちゃんと臭いです。
こういったご寄付事情から、やはり世間ではオランウータンはじめサルの仲間の食べ物といえばフルーツ(果実)というイメージを持たれていることが伺えます。しかし、実のところ野生で暮らすサルの食事はだいぶ異なります。果実は年中手に入る食べ物ではありませんし、野生の果実は、私たちが食べている品種改良された果実(栽培果実)とは栄養価が大きく異なります。栽培果実は、もともと実にため込むはずだった食物繊維やタンパク質、脂質の代わりに甘い糖分を貯め込むように品種改良されているのです。ですから、動物園で栽培果実を与えすぎれば糖尿病や虫歯にまっしぐらです。何事もほどほどが肝心ってことです。また、ボルネオオランウータンは非常に太りやすいことで知られています。
彼らの生息地であるボルネオ島では、数年に一度だけ果実がいっせいに実るそうで、その時期にたくさん食べて一気に太り、次の一斉結実までの数年は粗食でやり過ごすようです。そのため、美味しいフルーツをたくさん食べれば、あっというまに肥満ウータンの出来上がり…!そうなる前に、ミンピーには申し訳ないのですが頂き物の一部は他の動物達におすそ分けすることもございます。
さて、動物園ではこのようなオランウータンのお食事事情を鑑みまして、野生下でも多く食べる「木の葉(樹葉)」を多く与えるよう頑張っています。とはいえ、ミンピーはかなりグルメでいらっしゃるので、彼女が好む葉っぱを見つけて、それを安定的に供給するのがなかなかに難しい…。例えばケヤキの葉であれば、園内でも手に入れやすく春先はたくさん食べてくれるのですが、夏に向かって葉が成熟し始めると食べなくなります。そしたら次は、第4駐車場までトラックを走らせてシラカシを採りに行きます。シラカシはどの動物も年中食べてくれる万能選手です。ところが、採りすぎれば当然無くなってしまいますので、シイやネズミモチ、クワなど他の葉っぱも織り交ぜつつ、なんとかやりくりしています。ミンピーの最近のお気に入りは「エノキ」。今の時期は美味しい木の実もついていて、一石二鳥!といったご様子です。
皆さまが動物園でサルを観察する際には、ぜひお食事事情にもご注目ください。野生動物としての彼らの生きざまをご覧になれるかもしれません。
(髙橋)